「すまねぇ、寝過ぎた。」
「いえ。おはようございます。」
師範があまりにも気持ち良さそうに寝るもんだから起こさずに素振りをしていたが、起きてきたらしい。
「やるかぁ。」
伸びをする師範。
「お願いします。」
×××
「おら、ちょっと来い。」
自分の得意の壱の型、塵旋風・削ぎを軽くいなされ、呼吸も使わず反撃されてしまった後のことだった。
「いいじゃねぇか、壱の型。でもなァ、あれじゃちと甘ぇわ。」
「いいか?アレは削ぐ技だ。オメェは叩き切るしかしてねぇ。」
なるほど、わかりやすい例えだ。
「あとお前腕力含め全体的に力弱えわ。もっと鍛えろ。体幹は強えし体力もあるがそんだけじゃ上弦や下弦には通用しねぇよ。」
「はい。」
鍛えろ、とは言われたものの腕立て伏せをしていたら上に師範が乗っかってくるもんだから流石に潰れた。
「ゴラへばってんじゃねぇ!!もう一回だ!」
私を筋肉だるまにする気でしょうか。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。