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第1話

1話
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2022/02/22 09:05
私は裕福な家で育った。






いつからだろう。お父さんの遊びのせいでどんどん借金が増えていき、だんだんお世辞にも裕福とは言えない、ひもじい生活をするようになった。



お父さんは暴力を振るう。





ひかえめに言ってもクソ親父、ってところだろう。







今日もお父さんは遊びに出かけた。




「逃げて!逃げなさい、あなた、」



「え?」




恐怖と衝撃で動けなかった。



お母さんを食している物の正体は鬼だった。
お母さんにかぶりついて、お母さんはみるみる赤く染まっていく。



ふと目をやると、青い着物を着ていることに気がついた。





「嘘っ、お、お父さん!」
お父さんはこっちに来る。逃げられない。いや、逃げる?痛いのは嫌だ。




お母さん、ごめんなさい。すぐにそっちにいきます。

「てめぇの相手はこっちだァ!!こいやァ!」
急に現れたその人は、「殺」と言う字が書いてある羽織を着た、色素の薄い傷だらけの人だった。

風だのなんだの聞こえ、次に隙間から外を見ると鬼の頸が飛んでいた。






「おい、大丈夫か?」



「はい、ありがとうございます。」





やっと頭が追いついてきたらしく、どばっといろいろなものが込み上げてきた。





ポロポロと涙をこぼす私のそばに座り、その人は声をかけてくれた。






「怖かったなァ。」



大嫌いな男の声なのに、その優しい響きは心に染みた。




「ごめ、なさい、お母さんっ…」




そんな私に彼は言った。





「何かを守りたいんだったら、強くなれ。」






その瞬間、私の中で何かが目覚めた。



×××





朝起きると、目の下の敷物が濡れていた。

あれは、私が11歳の頃のこと。未だに偶に夢に見る。





鬼に変わったお父さんがお母さん襲って、男の人が助けてくれたんだ。






そんな私も、「助ける側」になろうとしている。

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