第3話

「英語が繋ぐ物語」②
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2022/01/27 12:02
昔々…平凡な少女が普通の小学校でありきたりな日々を送っていました。
そんなある日突然転校生がやってきました。
とても綺麗なウェーブが光に反射し、輝く金髪。サファイヤのような青い瞳。
私が見てきた人の中で一番綺麗だと、私は一眼見た瞬間そう思った。
「Hello every one.
My name is Chloe Bailey(クレア ベイリー)
Nice to meet you!!よ、ろしく、ね!」
「ベイリーさんは、ドイツの方の子で、日本の小学校で学ぶために最近お引っ越しされたみたいです!みんな仲良くしてくださいね」
「はーい!!」
みんなが大きな声で返事をする中、私は彼女を見つめたまま動けなかった。
お人形さんみたいに綺麗で…でもすごく可愛い笑顔を見せるクレアちゃんから目を離すことができなかった。
そして先生の長い話が終わって、休み時間。
私はクレアちゃんとお話ししたくて席を立ち上がる。
けれど私の席はクレアちゃんの席からは遠く
クラスの中心にいる女の子たちがクレアちゃんを囲って何か話していた。
私はあの輪の中に入ることはできないけど、どうしてもお話を聞きたくてすごくそばによってみんなとの話を聞いていた。
「クレアちゃんって可愛いね!!
この髪って地毛なの?お母さんの遺伝?それともお父さん?」
「クレアちゃん今どこに住んでるの?」
「お誕生日とか教えてよ!」
「あぅ……うぅ……にほんご、、難しい…
ゆっく…り?…えっと……
Please speak slowly. It'sOK?」
「えっ、クレアちゃんなんて言ってるの?
私たちわからない。ねぇ?」
「うんうん、私たち英語教わってないもん」
「話せないならいいや、もう行こう?」
「そうしよう、そうしよう」と口々に言って立ち去っていく子たち。
なぜ離れていってしまうのか、わからないと言っているような顔をするクレアちゃん。
あっ、どうしよう……クレアちゃんが一人になっちゃう…。
助けてあげたいと思った私はすぐにクレアちゃんの席に行って話しかけてみる。
「は…Helloy,Ms Chloe.
Nice to meet you too…!!
あっ、合ってるかな?これ……」
塾で教わったことを気をつけながら初めましての挨拶をする。
正直本当の外国の人とお話しするのは初めてでとても緊張して、発音も変になってしまった。
ちゃんと伝わったかな…?
「Oh!! Can you speak English !?」
私の手を掴んで立ち上がりぴょこぴょこと跳ねて尋ねるクレアちゃん。
なにこれ!めっちゃ可愛い!!それに私の手を掴んでる!?し、幸せ!
「ええっと……I can speak English.
But!! I can't speak English well…OK?」
「OK!!OK!! I'm very happy!!!」
「そ、それならよかった…!」
「うん!!よ、よろ、しくね…!!
えっと……」
「あっ!私の…ええっとどこまで日本語でいいのかなー?た、多分…
My name is 音川 千聖!」
「千聖…?千聖…ちゃん!!
これ、からよろしく…ね…!」
「うん!!よろしくね!クレアちゃん!!」
日本語が少しカタコトなところ。
誰よりも笑顔が可愛いところ。
その一つ一つに惹かれていく。綺麗な目に吸い込まれそうになる。
こんなに楽しくて嬉しくて、胸がドキドキするのは初めてで…。
周りのことなんか気にする余裕なんてできなくて。私は教室の空気を知らないまま楽しい一日を過ごしていた。
それから数日間、お互いの趣味や好きなことについて教え合った。
すると好みが似ていたのかとても話しやすかった、
ーーーーーーー
「ねぇ」
『ドン!!』
クレアちゃんが来てから一週間。
毎日のように楽しい日々を過ごしていたけれど、今日は朝からクラスの中心にいるような子に話しかけられた。
「ランドセルどけて欲しいな…。
一時間目の授業の準備したいんだけど…?」
「いやよ」
「えっと……なんで…?」
「えっ、なんでってあなたがウザイからに決まってるでしょう?」
えっ…?意味がわからなかった。私は何も目立つようなことをしていないし、あの子達に逆らうようなこともしていない。
なのに何故か周りの子達はみんなクスクス笑っている。
「私って…なにか悪いことでもした…?」
『ガラガラガラ』
「あっ!クレアちゃ……」
私がこの子達の輪から飛び出して、クレアちゃんに駆け寄ろうとした。
けれど、この子達の壁からは抜けることができず、リーダーらしき女の子に遮られた。
「クレアちゃん!!!ねぇねぇ私とお話ししましょう!!」
「そうそう!あの変な子のせいで全然話せなかったから沢山話そうよ!!」
「えっ……?」
思わず声が出る。
理解不能。
それだけが頭の中に浮かぶ。意味がわからない。私が何かしたのかな…なにか、この子達を傷つけてしまうことを。
「ねぇ、あなたまだ気づいてないの?」
クレアちゃんと輪の中心にいた2人を除く、このクラスの女子全員私のことを嘲笑うかのような目を向ける。
「クレアちゃんと関わりすぎなのよ」
「そうよそうよ、少し英語ができるくらいで調子に乗って!」
「私たちが話せなくなっちゃったじゃない」
「で、でも!!
勝手にクレアちゃんから遠のいたのはあなたたちが……!」
「ねぇなに?私たちに文句でもあるの?
こんな大人数に対して1人なんだよ?
勝てると思ってるの?」
でも……でも…!!!
これじゃあクレアちゃんと話せなくなっちゃうし、私…一人ぼっちだし……。
クレアちゃん…日本語難しいって言ってたから私が少しずつ手伝ってあげてたのもできなくなっちゃうんじゃないのかな?
みんながクレアちゃんにくっついちゃうから私と話す暇なんて無くなっちゃうんじゃないの?離れたくないよっ…。
そう…言いたかったのに…。
声が出ない。周りからの視線が怖い。
「ご………ごめんなさい…」
怒りや悲しみの気持ちを無視して、口が勝手に謝罪の言葉を口にする。
なんで…なんでっ!!なんで言うこと聞かないの!!?
なんで口が勝手に返事をするの?そんなこと思ってもいないのに!!!!!
私は悪くないのに…!!
もう本当…
「最悪だ」




③へ続く

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