第11話

「望み」①
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2021/03/04 11:46
『希望』と書いて、『のぞみ』と読む私の名前。
常に希望を持ち続けてほしいという、両親の願いを込めてこの名前にしたと聞いた。
私自身この名前がすごく好きだったし、この名前に恥じぬよう努力してきたつもりだ。
けれど、最近何をするにもやる気が出ない。
沢山の人や、友達から『頑張れ』と、応援されても自然と笑顔になれない。愛想笑いしかできなくなってしまった。
何故だろう。私は人に応援してもらえるだけで嬉しいはずなのに……。
それさえも、最近は感じない。
心の空白が満たされない…。
私の本当の望みは…一体なんなのだろうか。
ーーー*ーーー
「頑張ってね!!」
「……えっ?」
「あれっ?先生が学級委員は今から職員室に来てくれって、言ってなかったっけ?」
やばい…全然聞いてなかった……。
集中力も最近落ちてるみたい…最悪だ。
もっと気をつけないと、授業にも追いつけなくなる。
「聞いてなかった…ありがとう。恵莉」
「いえいえ!!希望頑張ってね!
私は応援しかできないから…」
「ううん、すごく嬉しい。ありがとう…。
じゃあ行ってくるね」
恵莉は私にとって親友と呼べる唯一の存在。
沢山のことを応援してくれて、何回も励ましてもらった。けど…ごめんね。
私の心はそれだけじゃ満たされなくなった。
私は一体どうしてしまったのだろう。
そんなことを考えながら職員室へ向かう。
「失礼します。先生、職員室に呼び出すなんて珍しいですね。
教室で済ませて欲しかったです…」
「すまんすまん。一応クラスの生徒が騒がしいと何かと不便だろ。
だからここまで来てもらったんだ。
で、本題なんだが………」
ーーーー
「………なるほど。わかりました。この件は私が…というか学級委員でなんとかします」
「すまんな…いつもいつも。
学級委員として頑張ってくれて先生はすごく助かっているし、クラスの人も感謝していると思う」
先生の頼み事を聞き入れ、教室に戻ろうと思っていたけれど先生が話を続けた。
「そう……なんですか?」
「あぁ絶対にそうだ。俺が断言してもいい。
だから、お前のやっていることは無駄じゃない」
どうして急に…そんなことを?
「ん?疑問に思ってるだろ?急すぎて」
っ……!私の思考を読まれているみたいで少し恐怖を抱く。
そんな私を放って頷きながら話を続ける。
「うんうん、わかるぞ……。先生だってそんなことをされたら怖いからなぁ」
「なら、そんなことしないでいただきたいのですが……」
「うっ…まぁごもっともだ。
だがな、お前のことを見ていると何か欠けてる気がするんだ。
表情や行動から少しだけ……な」
いつも以上に先生が真剣で…本当に心配してくれているのがわかる。申し訳ない………な。
けど、先生が言っていることは大体正しい。
自分自身、欠けている…満たされていない感じがする。
「まぁ、俺の勘違いかもしれんが…。
何かあったらちゃんと言ってくれよ?」
「それは…もちろんですよ…!でも、大丈夫ですから多分相談することはありません」
「そう……か、ならいいんだが」
「はい。なので失礼します」
まだ何か言いたげだった先生を置いて、先に教室へと戻る。
違うんですよ………先生。
先生が心配してくれても…欠けたまま……。
もう……どうしたらいいか分からないや。





続く

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