今日から織屋は華蓮のクラスメイトだ。
その際に注意しておきたいのは、裏口入学だとバレないようにする事。
ちなみに織屋の朝のルーティンの1つである、華蓮の送迎という所までは何ら変わりはない。正門で華蓮を降ろした後に、制服に着替えて校舎内に入らないとならない。
敷地内の来客専用の駐車場に停め、高校1年生の生徒が車から出てきてロックをかけて校舎へ…なんて姿をもし見られたりでもしたら、違和感でしかない。なので織屋は、職員専用の駐車場へ入り、その車内で着替えを済ませてから1度裏から外へ出て、正門から入り直すという大掛かりな動きをするのだ。職員は事情を知っている為、職員専用の駐車場の使用許可は下りている。
先日華蓮からは、
と言われていた織屋だったが、織屋は年齢バレしないかが不安でしかなかった。
華蓮達と10個以上も離れているので、“老けてる”と怪しまれる可能性は大いにある。車の中で着替え終えた織屋は、少しでも若見え出来るようにしないとまずいと思い、久しぶりにワックスで髪の毛を遊ばせてボリュームを出した。普段から髭も剃って清潔にしているが、今日はいつもより念入りに剃り残しが無いかを確認した。
今日は初日なので、織屋は中に入った後に職員室へと向かった。
そしていよいよ華蓮のいるクラスへ。
チャイムと同時に、担任の先生と共に中に入った織屋。突然の織屋の登場に、教室の生徒達は若干ざわめき始めた。そしてついに自己紹介の時間だ。
ちなみに織屋は、念には念をとここでは偽名を使うことになっている。
その偽名の由来とは、“如月 由紀子”と“南原 海”という、織屋の好きな小説家から取ったそうな。
自己紹介を終えて深々とお辞儀をする織屋は、拍手に包まれた。
席は融通を利かせてもらい、華蓮の隣に座る事になっている。一先ず席に着いて、第1関門を突破した織屋は、フーっと静かにため息をついた。
華蓮はそんな織屋の事を横目で見て、髪型に着目した。
そんな事を頭で呟きながら、少し心臓がザワザワするのを感じていた。
2-2へ続く
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!