次の日、昨晩の亜蓮からの熱烈なアプローチに押し負けた織屋は、本当に校舎内に潜入していた。
華蓮の通う学校は、聖グレーテル学園という私立の高校。所謂、スーパー金持ちが集う学校だ。しかし、なんてメルヘンな名前だろうか…。
その聖グレーテル学園の教頭と亜蓮が仲が良いらしく、今日の潜入捜査もその教頭が亜蓮の名に免じて許可をくれたと言う。
ちなみに亜蓮もここの卒業生だ。
校門前で華蓮を降ろした後に、帰ったふりをした織屋は、学校の敷地内の駐車場に車を停め、職員入口から中に入って受付を済ませ、今に至る。いつも着ているタキシードでは目立ってしまう為、自分がいるとバレないよう、着替えてごく普通のメンズスーツを身にまとっている。
華蓮の教室を教頭から教えてもらった織屋は、そっと教室を覗く。
するとこんな描写を目の当たりにした。
隣の子がシャーペンを落としてしまった為、華蓮が拾ってあげたのは良かったが、その相手に向かってこの口調。織屋はその光景に目を丸くする。
次の授業の華道の時間では…
上手く生ける事が出来なかったクラスメイトに対して、アドバイスをしてあげたのは良いが、またしてもこの口調。今回に関しては、
と口論になってしまった。織屋はこの光景に頭を抱えた。
別の時間では、廊下で落ち込んでいる生徒に華蓮から声をかけていた。それは良かったものの、聞けば彼は好きな子に告白をしたが、それが失敗に終わってしまったことを引きずっているという事だった。それを聞いた華蓮は慰める所か…
と言い放ってしまい、最悪な印象を与えてしまった。
織屋はいよいよ割って入ろうか悩んでしまう程、この事態に失望していた。
挙句の果てには…
お弁当を忘れて落ち込んでいるクラスメイトに対して、華蓮から歩み寄ったは良いものの、中身を見せた辺りからの会話が段々と変な方向へ…
と、おかず自慢を始めてしまった。
遠くから見守る織屋が呟いた通り、彼女は特待生枠としてこの学校に入学した庶民の女の子だ。そんな子に向かって当然と断言してしまうのは、“金持ち自慢”に見えてとても悪印象だ。特待生の彼女も、華蓮の圧にビビってしまっているようだった。
そう、このように華蓮は、行動と口調が合っていない事から孤立してしまっていたのだ。
織屋もついついため息が出てしまった。
1-3へ続く
どうも!ちぁるです✨
昨日の突然の更新から1夜……
皆さん、新作いかがでしょうか?←まだ始まったばっかだわ!!
一先ず今後は毎週木曜更新を目指して
皆さんにお届け出来たらと思っています💡
今作から1話分を複数回に分けて
更新するようにしたので
読みやすいとは思います!!
感想などもドシドシお待ちしております😄❣️
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。