第29話

story #29
637
2021/07/10 22:19
小鳥のさえずりと共に目を覚ます。

外を見れば既に太陽が高い位置にあった。

そのまま隣に視線を移すと

義勇さんの整った綺麗な寝顔がある。
冨岡 義勇
スー…スー…
小さな寝息を立てて気持ちよさそうに寝ている。

起こすのがもったいない。

私は起こさないようにそっと布団から出ようとした。

その時、腰に腕を回されて

そのまま強引に引き寄せられる。
あなた

わっ…!!

冨岡 義勇
どこに行くんだ…
あなた

と、冨岡さん…
起きてらっしゃったんですか…?

冨岡 義勇
あなたが動いたので起きた。
あなた

あ…すみません…
起こしちゃったんですね…

冨岡 義勇
いや…問題ない…
まだ開ききらない目を擦りながらそう答える冨岡さん

寝起きで頭が回っていないのか、

少しボケーッとしている。

そんな冨岡さんも愛おしかった。
あなた

あ、私、ちょっとお水飲んできます。

冨岡 義勇
…そうか。
そう言って部屋を出た。

戸を閉めてからそのまま壁に身を預け、

ズルズルとその場に座り込む。


あんな近い距離に冨岡さんの顔がっ…

恥ずかしいっ…


自分でもわかるくらいに顔が熱くなっていた。

きっと今の自分は、耳まで赤くなっている。

そんな顔、冨岡さんには見られたくない。

そう思いながら立ち上がって、水を飲むため、

炊事場に向かった。

すると、そこに宇髄さんが居た。
宇髄 天元
昨日は派手にやったなぁ…
あなた

えっ…?!////
盗み聞きですかっ…

宇髄 天元
人聞きの悪いこと言うなってw
たまたま通っただけだ。
あなた

盗み聞きは盗み聞きですよ…

宇髄 天元
ありゃ、冨岡も派手に
興奮するだろうな…
あなた

派手に興奮って…
その言い方やめてくださいよ…
なんか気持ち悪いです…

宇髄 天元
ははっwwすまんすまんww
じゃ、これから任務だから。
そう言って宇髄さんは任務へ向かった。

水を飲んだあと、私は冨岡さんの待つ部屋へ戻った。
冨岡 義勇
遅かったな。
あなた

あ…宇髄さんとばったり会いまして…

冨岡 義勇
そうか。
少し不服そうな顔をしている冨岡さん。

まるでその顔はお菓子を買って貰えなかった時の

小さい子供のような顔だった。

冨岡さんもこんな顔するんだなぁ…

そう思うと自然と笑みがこぼれた。
冨岡 義勇
何を笑っている。
あなた

いえ、
義勇さんが珍しい表情をなさるもので
つい。

冨岡 義勇
っ…
そのタイミングで名前を使うのはずるいぞ
あなた

なんですか?義勇さん。
あ、もしかして、嫉妬してます?ww

冨岡 義勇
していない。
あなた

強がらなくていいんですよ?w

冨岡 義勇
胡蝶と同じことを言うな。
あなた

へ…?

またしのぶさん…?

あんな綺麗な人と比べられたら勝ち目なんてないのに…

いつも冨岡さんはしのぶさんの名前を呼ぶ。

私を好きなのは…嘘なのかな…?

私の考えすぎだ…きっと…そうだよ…

自分にそう言い聞かせて、冨岡さんに背を向ける。

すると、後ろからスルッと細くて綺麗な指で

髪を撫でられる。

私の髪を撫でながら冨岡さんは、
冨岡 義勇
今日も美しい…
そう呟く。

だけどその言葉が痛くて…

嬉しいはずなのに…

悔しさ…憎しみ…嫉妬…

そんな感情ばかりで埋め尽くされていく。
冨岡 義勇
どうした。
あなた

え…?
あ、いえ…何も無いです。
ちょっと蜜璃さんのとこに行ってきます…

冨岡 義勇
黙り込む冨岡さんを背に部屋を出る。

戸がしまったと同時に一気に涙が溢れ出す。


嘘だったら嫌だな…

そんな人じゃないってわかってるのに…

ほんとに好きなのか不安になる…

浮気されてるのかな…

私が浮気相手ってこと…?

そんなわけないよね…?

だって…冨岡さん…

私の事、何度も目を合わせて好きだって…


頭の中で考えても出てくるのは不安なことばかり。
あなた

やっと両思いになって…恋人になれたのに…

胡蝶 しのぶ
大丈夫ですか?
こんな時に限って…


" 全部あなたのせいで狂ってるんですよ "

" 冨岡さんに何したんですか…"


と言える訳もなく…

なんて答えればいいか分からない…
あなた

ほっといてくださいっ…

下を向いて逃げるように来てしまった…

宛もなくフラフラと歩いていると、

廊下の突き当たりまで来てしまった。

目の前の壁に額をくっつけて、

そのままズルズルとへたり込む。

嗚咽を漏らしながら静かに泣く。
甘露寺 蜜璃
あなたちゃん…?
こんな所でどうしたの…?
後ろからした声に振り向くと

蜜璃さんがいて…
あなた

蜜璃さっ…(泣)

甘露寺 蜜璃
どうしたの?!
私は全てを蜜璃さんに打ち明けた。
甘露寺 蜜璃
そっか〜…
それは不安になるよね…
あなた

私…どうしたら…

甘露寺 蜜璃
はっきり伝えな?
私は嫌だって。
あなた

でもっ…

甘露寺 蜜璃
大丈夫だよ。
あなた

甘露寺 蜜璃
冨岡さんの恋人は誰なの?
あなた

…私…です…

甘露寺 蜜璃
そう。胡蝶さんじゃないでしょ?
そう言われて私はまた冨岡さんがいる部屋へと戻る。

戸を開けると背中を向けて布団に寝転んでいた。

もういいや…もう一回寝て全て忘れてしまおう…

そう思って冨岡さんに背を向けて布団に入る。

自分で背を向けておきながらすごく寂しく感じた。

溢れそうになる涙を必死にこらえて目を瞑る。

すると冨岡さんは私の方を向いて

優しく腕の中に閉じこめる。

ふわっとしてて安心する匂い…

心が軽くなっていくと同時に涙が一気に溢れ出す。

ただ無言で抱きしめられているだけなのに

拭っても拭っても涙が止まらなくて…
冨岡 義勇
何か不安にさせていたのか…?
少し寂しそうな声で聞いてくる冨岡さん。
冨岡 義勇
すまなかった…
か細くて今にも消えてしまいそうな程に

小さく弱り切った声。
冨岡 義勇
こっちを向いてほしい…
そう言う冨岡さんの声に、

私は冨岡さんの方に体を向ける。

そのまま口付けをされる。

息を着く暇もないくらいに

何度も向きを変えて唇を重ね合わせる。
あなた

んぅ…チュッ…んんっ…

冨岡 義勇
んっ…チュッ…ん…
冨岡 義勇
不安が無くなるまで愛してやる…

プリ小説オーディオドラマ