宿に道具を置き、夜まで時間があるため、
2人で西野町を回ることになり、宿を後にする。
初めて2人でのお出かけが任務だなんて…
なんか…悲しいな…w
もう少し洋服とか着て買い物とかしたかったな…
まただ…
昼間なのに鬼の気配がする。
その気配も言われて気づくくらいに
街に馴染んでいる。
なのに冨岡さんは言われずに気づいた…
実力の差を感じて、また気が落ち込む。
落ち着いていた鼓動がまた早くなる。
足が震え、呼吸の仕方を忘れる。
どんどん荒くなっていく息に富岡さんが気づき、
私の手を握ってくれた。
冨岡さんの手は大きくて暖かくてとても安心できた
そうだ…今回はひとりじゃない。
2人で戦うんだ…
そう思うと心も少し軽くなった気がして
呼吸が落ち着いてきた。
鬼殺隊は非政府組織。
刀を持ったまま街中を歩くわけにはいかないと
宿に置いてきてしまったのだ。
声が震えて上手く喋れないながらに
必死で返事を返した。
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昼間は運良く被害者も出なかった。
日が傾き、人がまばらになってきたこの時間に
鬼と戦う準備をするため、一度宿へと戻る。
外に出ると、月明かりが2人を照らす。
冷たい夜風に羽織をなびかせ夜道を歩く。
昼間の街とは変わって静かになった街が
不思議な感覚だった。
昼間、鬼の気配を感じた場所へ歩いていくが
人がいなければ鬼の気配もしない。
確かにあの時、微かではあったが鬼の気配がした。
二人であたりを見回しても一切鬼の気配がしなかった
逃がしたかな…
そう思った時だった。
叫び声が聞こえた方に行けば、
襖を突き破って外に放り出される人が。
服を真っ赤に染め何かに酷く脅えている様子だった。
必死に頭を下げ、涙目にながら命乞いをする男性。
その先には、鬼の姿があった。
冨岡さんは一瞬にして刀を抜き、
鬼に斬り掛かる。
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街の人を送り届け、急いで冨岡さんの元へと戻る。
戦いは終わっていて、冨岡さんの姿はなかった。
後で合流するだろうと思い、
見回りに行こうと歩き出す。
任務を重ねるごとに暗い夜道に慣れはしたものの
西の街の夜道は未だに怖い。
過去のトラウマもあり、余計に怖く感じる。
昼間とは打って変わって異様な雰囲気を放つ夜の街
肩の重荷がどんどん重たくなっていくように感じる
後ろからする声に体がビクッと跳ねる。
後ろを振り向くと鬼がいた。
怖くて足がすくむ。
あの時のトラウマが脳裏をよぎる。
そんなことを考えている暇はない。
自分にそういいきかせて、刀を抜く。
鬼は笑い、牙をむき出しにして襲いかかってきた。
ガキィンッ!!
鬼の爪と自分の日輪刀が
激しくぶつかり合い、火花を散らす。
重い衝撃が腕に伝わって来る。
精一杯の強がりの言葉を並べて
鬼、そして自分の恐怖心と戦う。
まずは右腕…
再生しないうちに次の技…
そして左足…
最後は…
風にサラサラと流され消えていく鬼。
それを見つめながら冨岡さんの帰りを待つ。
鬼が全て消えても
冨岡さんが戻ってくることは無かった。
夜のせいなのか、余計に寂しく感じてしまう。
会いたい…顔が見たい…声が聞きたい…
そんな感情が心の中を埋めつくしていた…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!