金曜日。
あれからずっと、智の事で頭がいっぱいで。
勉強も全然集中できなくて。
やっぱりちゃんと会って話そうって、
学校帰り、スタジオへ行ってみた。
けど、シャッターが下りていて。
そういえば今日は練習じゃなくて、
バイトの日だ…
帰ろうとすると、
あゆみさんだ。
そう言って、近くの公園へ。
それって、私は邪魔だって事だよね…
なんで…?
どうして?
なんで、こんな事言われなきゃならないの?
智の彼女は私だよ。
側に居るのはあなたじゃない!
私だよ!
………
って…
言う資格なんかない…
側で支えることなんかできないくせに、
家も遠いし、塾だってあるし、
きっとお母さんだって…
でも、1番の理由はそうじゃなくて。
私は智の気持ちを、
考えてあげられなかった。
知ってたのに…
迷ってるって打ち明けてくれて、
頑張ろうねって約束して、
あんなにやる気だったの知ってたのに…
ごめんね、智…
自分が許せないよ…
惨めで…
情けなくて…
最低だ…
あの人の言う通り…
私がここへ来たって、
智の足を引っ張ることしかできない。
自分の気持ち押し付けて、
困らすことしかできない…
じゃ、どうすればいい?
智の為にできる事ってなんだろ…
気づくと、いつもの公園にいて。
ぼーっとしていた…
すると電話が鳴って。
智だ。
会う資格なかったからだよ。
私には、何もできないからだよ。
って、あゆみさんが言ってた…
平気なわけない…
本当は嫌だよ…
側にいたいよ…
離れたくないよ…
涙が溢れてきて…
息が苦しくなって…
泣いてるのがバレないように、
手で口を覆った。
これでいいんだ。
これで…。
私は遠くから、
智の足が治ることを、
イベントに出れることを、
祈っておこう…
それが私の、唯一できる事だから。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!