どうしても声が聞きたくなって、
塾の帰り、電話してしまう。
会いに行くって言ってほしい…
本当に来なくてもいいから。
言ってほしい…
って…
私何してるんだろ…
困らせてるだけじゃん。
ひどい女…
智、ごめんね…
電話を切った後、
ふと、空を見上げた…
まんまるのお月様に、
うすーい雲がかかってて。
ボーッと見てしまう。
雲が流れるのを待つけれど、
待っても待ってもとれなくて…
冷たい風が吹いてくる。
帰りたいのに、
動けない。
なんでだろ…
私は何をこんなに、
焦ってるんだろ…
しばらく夜風に当たりながら、
頭を冷やすんだ…
美香がやってきた。
いつもの公園。
ベンチに座って待っていると、
後ろから目隠しされる。
私はその手の上に自分の手を乗せ…
そう言いながら、隣に座った。
両手で顔を挟まれ、
智の顔の前へ待ってかれる。
恥ずかしくて目が見れない…
ゆっくり智の目を見る。
優しい目。
安心する目。
大好きな目。
すると、そのままチュッとしてきて。
抱きしめられる。
智の身体に包まれながら、
私は自分を責めた。
こんなに愛されてるのに、
なんで心配したりしたんだろ!
バカバカバカ!!
そう言いながら、私の手を取ると、
恋人繋ぎをした。
そう言って智は、
自分のポッケに繋いだ手を入れた。
駅前へと歩く。
すると途中で智の携帯が鳴る。
智はすぐに出ようとしない。
電話に出る。
誰だろ…
またかけるって…
あゆみさんじゃないよね?
気になりすぎて、聞いてしまう…
あゆみさんは、ただの友達。
あゆみさんは、ただの友達。
あゆみさんは、ただの…友達?
何でかけてきたの?
何の用なの?
てか、智の口からあゆみって…
なんか聞きたくない…
せっかく久しぶりに会えたのに…
喧嘩なんかしたくないのに…
したくないけど…
気持ちが抑えられないよ…
気持ちの切り替えを、
うまくできる自信がない…
走って智から逃げた。
私が100%悪いってわかってる。
私のヤキモチだってわかってる。
でも、この感情を、
どうすればいいかわからない…
苦しくて、
悲しくて、
胸が痛い。
智、ごめんね…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!