駅に向かって歩いた。
よく通ったこの道。
あの頃の2人の後ろ姿が見える。
私は帰りたくなくて、
離れたくなくて、
寂しいのを堪えながら歩いてたんだ。
あの頃の切ない気持ちがはっきりと蘇り、
胸がギュッと締め付けられる。
私はまだ10年前のままなんだ。
そろそろちゃんと…
進まなきゃ…
駅に着く。
あれ?
ポケットに入れたはずのビー玉が…
ない…
入れたはずなのに…
ない…
………
………
………
でも…
いいか…
もう…
忘れなさいって事なんだ…
改札へと歩く。
けど、足が止まって。
動かない…
どうして…
なんで?
進みたいのに、
進まない…
だめだ…
やっぱりビー玉、
探しに行こう。
私の宝物、
見つけに行かなきゃ。
公園へ向かって歩いた。
どこかに落ちてないか、
必死に探しながら…
すると、
あなた…
智の声が聞こえて、
それから走馬灯のように、
智との思い出が頭を駆け巡った。
『美香の友達やろ?』
『真面目やな!ほら、座り!』
『俺な、人混み苦手やねん。』
『迷子になったらあかんやろ?』
『ビー玉?あげるわ!』
『俺、泳がれへんからつかまってい?』
『高い所があかんねん。けど乗るわ!』
『お化け屋敷も行ったるわ!』
『手繋ごう!そしたら目閉じててもええで。』
『さっきの手汗はあなたちゃんやで。』
『手にいっぱい汗かいてる子とかええなぁ。』
『あなたちゃんの事、好きやで。』
『付き合ってくれへん。俺と。』
『今日会うたら渡そうと思ってな。』
『なんで付き合ってくれたん?俺と。』
『ちゃんと好きになってくれた?』
『ずっとあなたちゃんの事しか考えられへんかった。』
『俺も幸せやで!』
『恋の病やな…笑』
『これからはこうやって沢山デートしよな。』
『俺、甘いもの大好き!』
『俺の歌聴いて。』
『妬いてくれへんの?』
『俺もあなたちゃんが初めての彼女やな。』
『俺の知らん男とはしゃべらんでほしい。』
『喧嘩しても、すぐ仲直りしよな。』
『どんな事があっても、俺から離れたらあかんで。』
『俺はあなたちゃんがええし、あなたちゃんやないとあかんの!』
『やっぱ俺ら、最高やな。』
『大丈夫やで。無理して歌わせたりせんから。』
『好きな食べ物も唐揚げだし、好きな飲み物メロンソーダやろ!』
『あなたの言ったことは、全部覚えとる。』
『これからあなたって呼んでもえ?』
『ちゃんと俺の目見て言うてや。』
『離れたくないに決まってるやろ?』
『よし!6月6日にしよ!場所はここやで。』
『無理するわ。俺やてすごく会いたいねんから!』
『会えなかった分、顔見せて!』
『なんかあったら言うんやで!』
『あーあなたやぁ…会いたかった〜。』
『あなたの手は冷たいなぁ。』
『怒ってるやろ!』
『もう帰る!とかやめてな。』
『心配するやろ、大事なんやから。』
『あなたの方が何っ倍も綺麗やで。』
『幸せやな。』
『うわっ!マフラーやん!俺な、マジで欲しかってん!うれしー!』
『この色な、俺が選んだんやで。』
『俺らは塗った後やけどな。』
『そや!俺らは運命の相手なんやで。』
『おいで。』
『隣同士で乗っても傾かん?』
『意味のない事なんかないと思うで。頑張ってやってる事は、いつか必ず意味あるもんになる!』
『今頑張ってやってる事を頑張ってやり続ける事が大切なんかなって。』
『うっわ!俺、めっちゃドキドキしてる!笑』
『観覧車、好きになったわ。』
『マフラーありがとな。大事にするで。』
『やっぱ俺の前だけな。』
『俺はヤキモチ焼きやねん。』
『今度はいつ会えるんかな…』
『本当はチャレンジしたくてたまらんけど、自信がないねんな…』
『ありがとう。なんかやれる気がしてきたわ!』
『あなた結婚しよな!』
『俺にはあなたが必要や。』
『何年後やろなぁ…』
『俺な、朝ごはんは和食派だけど、い?』
『なんでおるん?』
『送れんけど、ごめんやで。』
『今日来てくれたんやろ?』
『会えなくても平気なん?』
『絶対来いよ!約束やで!』
『会いたいねんけど、そっち行ってもえ?』
『なんでそんな泣くん?』
『あの時、あの決断をしてくれてありがとう。』
『また俺を1人にするん?約束したよな、どこも行かんて。』
『今日はそんな泣く日ちゃうやろ?』
『俺な、かっこつけやねん。』
『ほんま彼氏失格や。』
『俺は無理やで。』
『なんでこんなに好き同士なのにそんな話になるん?』
『こんなに好きやなに…無理やろ!!』
『天国から地獄に突き落とされた気分やわ…』
『なんで手袋せーへんの?』
『ったく…風邪ひいたらどうすんねん。』
『あったかいやろ?』
『俺も、ちゃんと考える。やから、少し時間ちょうだい。』
……………
智…
会いたいよ…
やっぱり、
会いたいよぉ。。
気づくと、
涙が溢れてて…
走っていた。
あのベンチへ向かって、
走った。
走って…
走って…
走って…
走って…
そこには…
そう言って、
私の手のひらにビー玉をのせた。
そう言って、
私の頬にそっと手を添えると、
親指で涙を拭った。
私は静かに頷く。
すると智は、
大切なものを包み込むように、
優しくゆっくりと私を抱きしめた。
お互いを確かめ合うかのように、
強く抱き合った。
智の胸の中は、あの時のままで。
私の心の中の、ぽっかり空いていた穴は、
すっかり埋まって満たされた。
小さな紙袋をくれた。
中に入っていたのは、かわいい花束で。
小さなお花に囲まれた3本の白い薔薇。
白い薔薇 花言葉 3本…
【終わり】
読んで頂き、
ありがとうございましたm(_ _)m
と、いきたい所でしたが…
その後のおまけストーリーあります。
是非…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。