みんなが2人きりにしてくれた。
遊園地の閉園時間まで、まだ時間があって。
とりあえず、散歩する事にした。
手のひらの上に、ビー玉が…
2人でビー玉を見つめる。
なんて事ない普通のビー玉だけど、
こんなに綺麗に見えるのは、
きっと好きな人からもらったからだよね!
そう言って私の手を取る。
神ちゃんの手は大きくてあっかくて。
ギュッとされると、
なんだろ…
安心する…
お化け屋敷の時もそうだった。
安心したから、ついて行けたんだ。
広場の端にあるベンチに座る。
目の前には時計があって。
もう6時を過ぎていて。
明るいけど、みんな帰る方向へ向かっていて。
さっきまで子供たち声で賑やかだった遊園地が、
だんだんだんだん静かになって。
私たちも、もうすぐさよならだと思うと、
寂しい気持ちでいっぱいになる。
神ちゃんは、
私の返事を聞く間もなく、
キスをした。
突然のことで驚き、
目が開いたままになっちゃって。
その顔を見て微笑む神ちゃん。
恥ずかしくて顔を両手で隠すと、
と、私の手をとる。
そして、私の頬にそっと手をおくと、
もう一度、優しくキスをした。
神ちゃんの優しい手に包まれながら、
神ちゃんの柔らかい唇が心地よくて、
私の目はいつの間にか閉じていった。
そして遊園地のBGMがちょうど切れた時、
一瞬無音になった遊園地で、
心臓がドクドクしてきて…
身体が熱くなってきて、
もう神ちゃんしか見れなくなって。
恋に落ちるって、
きっとこういう事をいうんだ。
すると後ろから、
と、みんながやってきて。
すごく恥ずかしそうな神ちゃん。
美香が、こそこそっとやって来て、
と、小さな声で言った。
同じく小さな声で伝えると、
みんなで笑って。
という事で、
私と神ちゃん以外が乗ることに。
私たちはコースターが出てくるとこで、
いってらっしゃーい!と見送る事に。
めっちゃ抱きしめられる。
すると、ちょうど美香達の乗ったコースターが!
その後、4人の叫び声が…
手を繋いで、走って遊園地をでた。
少ししてから拓巳君から電話が来て。
なんで先に帰るんだーって怒ってたけど、
美香からメールがきて、
“お幸せにー!また遊ぼうねー”っと。
帰りのゴンドラの中、
私はずっと聞きたかったことがあった。
神ちゃんは私の頭を撫でながら、
帰りのゴンドラの中も、
送ってもらってる電車の中も、
ずっと手を繋いでた。
繋いでない方の手には
ビー玉を握って。
お願いしていた。
この幸せが、
ずっと、続きますように…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。