たまたま点けたテレビ。
たまたまやってたドラマ。
たまたま流れたエンディング。
『ずっと ずっと ずっと 恋をして…いた…』
恋か…
あの日の記憶が蘇る。
もうきっと忘れてるよね…
28歳の誕生日。
導かれるようにここへ来て、
ビー玉をみつめながら、
あの頃の事を思い出していた。
〜高2の夏〜
夏休みに入ってすぐ、美香からメールがきて。
お母さんと浴衣を買いに行く。
浴衣なんか、小学生ぶりで。
花火大会へ行くのも、それぐらいだ。
なんだかもうワクワクする!
でも、知らない人もいるんだよね…
緊張するな…
うまく話せるかな…
迎えた花火大会の朝。
楽しみすぎて、早く起きちゃって。
時間が経つのが遅くって。
何度も何度も時計を見る。
早く夕方にならないかな…
ちょっと早いけど、メイクして、髪を結って。
そしてお昼過ぎごろ、美香からメールがくる。
“4時に虹ヶ丘駅で!”
よしっ!浴衣着て出発だ!
虹ヶ丘駅。
緊張しながら待っていると、
美香の声。
でも沢山の人で、どこにいるかわからず…
すると、
知らない人だったので、すぐにはついて行けず…
後ろをついていくと、
行列に並んでる美香がいて。
神ちゃんはそう言うと人混みの中へ。
夏休み、
こんな風に遊べるのはないと思ってた。
塾ばっかで、勉強だけで終わると思ってた。
誘ってくれた美香に感謝だ。
会場まで歩いた。
河川敷にシートが敷き詰められていて。
美香が小走りになって。
深々と頭を下げてしまう…
神ちゃんを置いてみんなで屋台へ。
河川敷にはサイクリングロードがあって、
それ沿いにズラーっと屋台が並んでいる。
せっかくだからみんなの分も買っとこ!
6本のラムネをぶら下げてシートへ。
シートには神ちゃん1人…
まだ誰も戻ってきていないようだ。
なんか2人って気まずいよね…
引き返そうとしたとき、
神ちゃんがこっちを向いて。
目があった気がする…
と言う事で、引き返せなくなりました…
とりあえずシートへ向かう。
神ちゃんは、誰かと電話で話してて。
私に、座っていいよとジェスチャーした。
おじゃまします…
かすかにだけど、向こうの声が聞こえて。
女の人だ。
目があって、
とりあえず軽く会釈した。
すると、神ちゃんも同じように会釈して…
シーン…
気まずすぎる…
とりあえず、なんか話さなきゃ…
と言う事で出たのが、
すると神ちゃんは、
携帯画面を見ながら、
なんだか冷たい感じで、
と言った…
えっ!?なんかまずい事聞いたかな…
どしよ…
他に何かある?
話題…話題…
頭をフル回転させてると、
と、話しかけてくれた。
これが神ちゃんとの出会い。
この時の私は、まだ知らない。
この人が私にとって、
とても大切な存在になるなんて…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!