花岡side
目を輝かせた5人が、わっと声をあげる。
そんなに着たいものなんだろうか。
私からしたら、学生時代に作った、大して価値のない服。
それなのに、こんなにすごいと言ってもらえるなんて。
目の前で、綺麗な衣装を着慣れているはずの5人が、目を輝かせながら次々と衣装に腕を通していく。
そしてそれと共にシャッター音が響く。
ジェシーにはちょっと小さいな、慎太郎違和感ないじゃん、まあメンカラ緑だしな、なんて楽しそうな5人の声が部屋に広がる。
信じられない光景だった。
そもそも今日は、妊娠のことで非難されるとさえ思っていたのに。
優しく笑った北斗が私の頭を撫で、思わず私の頬が緩んだ。
そしてその時。
カシャッ、と乾いた音が聞こえた。
音の方を見ると、田中さんがスマホを私たちの方に向けていた。
田中さんがニッと笑いながらそう言う。
なんだか、信じられないことの連続で。
胸の奥が、ジーンと熱くなるのを感じた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!