にやりと笑いつつ、返す高津くんの言葉はとてもあたたかい。
だからこそ、私は言っていた。恥ずかしさが優っていたからとはいえ、かなり強気な口調で言っていた。
私の強がりな発言を受けて述べる高津くんの発言は、次世代のエースである高津くんの姿からは想像も出来ない切ない表情をしていて釘付けになってしまう。
きっと高津くんなりに意を決して発言したはずなのに……。
私は、軽く流してしまった。
それが、よかったのか。悪かったか。未だに答えはわからない。
一つだけ言えるのは、この発言があったからこそ約束した未来があったという事実だろう。
そう言った高津くんは左手をひらひらと振って、私の元を去っていく。
その仕草は、ロジンバッグをマウンド上で左手を使って操る姿にダブって見えた。
どこまでも相手の気持ちを考える高津くん。
だからこそ、ここでも絶対に強引な発言はしなかった。
最後まで『気が向いたら』という逃げ道まで用意してくれていた。
そんな高津くんの優しさに気付くのは、卒業してしばらくのこと……。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。