今の経緯を話そうと思う。人混みの中を歩いていたら御姉様とはぐれてしまった。そして婚約者に会い、相手は僕に気がついていないのと名前を聞かれたが僕は何も話していない。そして現在に至るのであった。
「ねぇ…君はもしかして喋れないの?」
「別に…そんな事はありませんわ。」
そっけない態度で僕は答える。
「だったら何で名前を教えてくれないの?」
「…わたくしはリア=エリエージュです。これで満足でしょうか?」
とっさに考えた偽名と一人称を使い、私は応答する。
「ふーん…君リアって言うんだ。宜しくね、リア。」
「こちらこそ宜しく御願い致しますわ」
そう挨拶すると彼は訝しげな目でこちらを見てくる。
「そのしゃべり方…もしかしてブルジョア階級だったりする?」
いきなりそんなことを聞かれるが即否定する。
「わたくしはそんな階級ではありません。」
「…まあいっか!君面白いね。公爵の息子である僕が話しかけているのにそこまで強固な態度を貫くなんて…気に入ったよ。もし君がよければこの町を案内させてもらってもいいかい?」
助かるかも…王女なのに僕は全く町の風景を知らないし…せいぜい窓から覗いた事のあるくらいだしね。
「え…えぇ…出来ればそうさせて頂きたいものです」
そういうと彼は人懐っこい笑顔で
「じゃあ決まり!僕に着いてきて」
と言ってきた。
「分かりました。それでは宜しくお願い申し上げます。」
僕もお礼をしっかり言う。
「宜しくね!」
そうしている間に人通りが少なくなった。やがて、僕はロディに連れられる形で町を走り抜けるのであった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。