第3話

お姉様の部屋にて
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2019/05/29 14:28


 あれから数分後、僕は庭園から歩いて僕の姉であるサンドラの部屋に来ていた。
「失礼致します。ジェシカです。」
一言声をかけて扉を開けるとそこはいつものお姉様のお部屋だった。
「あら、ジェシカいらっしゃい。いきなり呼び出して悪かったわね。そこに座っていいわ」
指定された席に座りお姉様の顔を覗く。僕とそっくりな顔をキョトンとさせているお姉様は僕にはないような魅力を持っていた。いつでも冷静でいて暖かくて優しい声、それでいてとても賢くて…。見ているだけでも魅力が伝わってくる。
「そんなに人の顔を見つめてどうしたの?」
不意に声をかけられて少しだけ驚いてしまうがそれを悟られないように笑顔で返す。
「何でもないですの。それよりも僕に用事とは何ですか?」
「そうね…単刀直入に言うわ。あなた城下町に行った事はあるかしら?」
「い…いえ僕は一回も行った事はありません。それがどうされたのですか?」
どうしてこんなこんなことを聞くのだろうか?別に城下町に行った事がなくてもいいのではないか?とは思うのであるが用件を聞き出す。
「それで…要件は何ですか?」
「ジェシカ、城下町に行ってみない?もちろん私と一緒にだけど。」
城下町…?僕は一回も行った事はないが色々な物語を読んでいると大層にぎやかだと聞いたことがある。とても行ってみたい‼
「それは本当なのですか!?」
「ジェシカ落ち着いて本当よ。使用人には内緒だけどね。」
使用人に内緒…いい響き!
「お姉様ありがとうございますの。それでいつ行くのですか?」
あまり長くは居られないだろうがなるべく長く町のなかに居たいなんて考えながら恐る恐る日程を訪ねる。
「ああ、それなら明日いく予定よ」
明日!?また唐突な話だが今日中にたまっている仕事を片付けてしまえば大丈夫であろう。僕は首を振ってお姉様に返事をする。
「是非、連れていってください。」
「そう、分かったわ。それじゃあ明日の朝五時に使用人の目を盗んでここに来てちょうだいジェシカ。」
「わかりました、お姉様。」
「それじゃあ、今の話は内密にね。」
「はーい、分かったのですお姉様。」
返事をして体を後ろに向ける。
「それではお姉様、また明日お会いしましょう」
「それじゃあね、ジェシカまた明日会いましょう」
扉を開けて外へ出た。ああ、明日はとても楽しみだと考えながら僕は歩き始めるのであった。

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