第10話

エピローグ
762
2018/03/05 09:17
普通に家から登下校すること。


学校までの道。


桜並木。


3年間使った部室。


授業受けて、友達と笑いあった教室。


…そして、告白した図書室。


もう、今日で最後。


私たちはグラウンドに出た。


誰もいない。


卒業生はみんな帰ったみたい。


「ねぇ。」


佑輔を見上げていう。


「ん?」


佑輔の切なそうな、優しい笑顔に涙がこぼれそうになる。


ダメダメっ。


泣いちゃダメ。


最後くらい、笑顔でいなきゃ。


「あそこまで、手、繋ご?」


あそこ、と校門を指さす。


ここからたったの50メートル。


次会えるのはいつだろう。


半年後?


1年後?


そんなの、分からない。


だから…


今日だけは、手を繋いで。


「ん。」


少し照れくさそうに手を差し出す佑輔。


「あなた、」


ゆっくり歩き出しながら佑輔が私の名前を呼ぶ。


「これから毎日、電話しよーな。」


トクンッ。


胸の音が鳴る。


嬉しい。


離れてても、出来ることはある。


「うんっ!」


「辛くなったら、1日に何回もかけてきていいから。

それから、長期休暇んときはデートしよ。

あ、旅行してもいいよなー…」


目が合って、ニカッと笑う。


佑輔…。


あえてポジティブな話しかしない。


会えなくなるのが寂しい、なんて。


ホントはもっと一緒にいたい、なんて。


そんなこと言ったら、離れられなくなる。


「っ…。」


「え、ちょ、あなた!?」


私を見て慌てふためく。


あーもう、ごめんね?


最後は笑顔で、って思ったばっかなのに。


次から次へと涙が出てくる。


「あなたーっ…

せっかくオレが悲しくならないように楽しい話してんのにー!」


うぅ…ごめんね?


分かってる、けど…。


「違うの、佑輔。

悲しいんじゃなくて…あ、いや、それもちょっとはあるけど…

嬉しかったから…嬉し涙。」


佑輔が、そーやって気を遣ってくれてること。


電話しよ、会おうって言ってくれること。


「ありがと。」


佑輔が私を想ってくれてること。


私もちゃんと、返さなきゃ。


笑ってお別れしなきゃ。


ゆっくり歩く、といっても限りはあるもので、校門まではあっという間。


「…じゃあ、ここまでだな。」


帰る方向が違う私たち。


「うんっ。」


そっと手が離れる。


「好きだよ、佑輔」


佑輔を見つめて言う。


直接伝えられるときに、ちゃんと言っとかないと。


「な、なんだよ急に…」


私の言葉に佑輔は目を丸くした。


そして、ふっと笑って言った。


「オレも、あなた大好き。」


ドキンッドキンッ。


別れを告げるように桜の花びらが風に乗って舞い散った。


「じゃ、またな!」


「うんっ。

じゃあねっ!」


お互い背中を向ける。


もう、振り返らない。


振り返ったら…


前に進めない。


さよなら、私の大好きな人。


またね。

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