無料ケータイ夢小説ならプリ小説 byGMO

第9話

決意
「あなた。写真が好きなのね」
大学まで送ってくれると言う彼女の優しさにあやかりながら僕は不慣れな道を歩いていた。
「はい」
「あなた表情が読みづらいから何考えているのかわからないわ」
「ごめんなさい」
僕の無表情っぷりは世界レベルなのだと知った。
「でもあなたは私よりも彼らのことを考えていたわ」
彼女が悔しさ半分、羨ましさ半分のような表情をした。
「私は彼らのことを考えているようで社会のことを考えていた。異国のあなたにはそんなことは関係なかったのかしら」
「いいえ」
むしろ知ったからこそ僕はあのタイミングで写真を選んだ。
「僕は写真の力を信じているんです」
彼女はそうなのねと呟いて、視線を落とした。僕らは歩く。匂いがだんだんと市場で嗅いだ時のものへ戻ってきた。体はもうクタクタだ。
「あなたは写真家になるの?」
彼女は目で当然よねと確認しているように思えた。
「わかりません」
「なぜ?」
僕は一度考える。どう言ったら伝わるだろうか。
「今の時代、携帯が普及して日本では誰しもがカメラマンなんです。そんな中でプロのカメラマンと言うのはあまり必要なくて将来、食べていけるか不安で決められないんです」
僕の下手くそな英語で伝わっただろうか。
「結局、お金なのね。失望したわ」
彼女の言葉が胸に突き刺さる。彼女の目に涙が浮かぶ。
「あなたみたいに人に寄り添った写真が撮れる人がいるならインドでも日本でも世界中どこだって変えられる気がしたのよ。それがあなたの言う写真の力ってものじゃないの?」
彼女は僕は過信しすぎだ。彼女の口はまだ回る。
「私はひどく感動したの。他でもないあなたの写真に。私は将来、看護師になったら世界の医療の進んでいない道に進むつもり。その私を感動させたあなたはお金を取るの?」
インドの経済を僕はよく知らない。日本の経済もよく知らない。僕はなんで彼らにお金ではなく写真を選んだんだ。あの状況で写真を選んだ僕はお金よりも大切なものがあるって自分に言い聞かせたかったのではないか。彼らの助けになるとは思えない行動をとったのはなんでだ。理不尽さを超えるのは人の想いだと思いたかったからではないのか。
僕はやっと自分が何に悩んでいたのかわかった。
「写真家になりたいです」
僕は呟いていた。僕が悩んでいたのは写真の力を信じられていない自分がいたからだ。その自分を超えるため彼らのためにシャッターを押したんだ。
「写真家になります」
そう言ってからの僕の歩みにどことなく力強さが宿った気がした。