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第3話

日本空港
「悪い、緑茶飲みてえんだ。160円貸して」
その気持ちは分からなくもない。いざ空港に着くとみんなソワソワし始めた。僕は自分の財布から160円を取り出し、手渡す。
「そのカメラいつものと違くね」
160円を受け取った手の握り方を変えて僕の首にかかってるカメラを指差した。
「それ見たことあるぞ。チェキとかいうやつだろ」
どうだ博識だろと言わんばかりの顔をしている。
「うん、まあ。インスタントカメラなんだけど。チェキっていうのはインスタントカメラの中でもある会社が出してるものの名称なんだけど…」
「やっぱ、カメラのことになると饒舌だな」
僕が話している途中にそう言われて自分が饒舌になっていたことに気がつく。
「いいじゃん。プロっぽいぜ」
彼は僕の肩を叩くと緑茶買ってくると言って行ってしまった。僕は少しの不完全燃焼感を抱きながら空港内をうろうろすることにした。少し歩き始めてから
「おい。どこ行くんだよ」
振り返ると緑茶片手に彼が立っていた。
「さっきの話、まだ気になってんだけど」
僕はこの時、間抜けな顔を晒したのだろうか。自分ではわからないが彼は何かを察したように話題を振ってくる。
「何でインスタントカメラなんだ?パクられると嫌だから?」
自分だったらこういう考えだからを添える彼はやはり真面目なんだなと感じる。
「向こうのコンセントがそんなに余るかわからないし、旅行先でもし僕が写真を頼まれたらやっぱその場で渡したいなって思って。もちろん、一眼を盗まれたくはないってのもあるよ」
彼はなるほどなとつぶやいている。
「俺の勝手なイメージなんだけどインスタントカメラだとあんま綺麗に撮れないんじゃない?」
「撮れないよ」
僕は素直に応える。彼は一眼の方がいいだろと言いたげだ。
「でも、写真を綺麗に撮ることよりも大切なことがある」
「なんだよそれ」
食い気味に聞いてきた。
「確かに一眼で撮った方が綺麗だよ。でもねカメラはまだ人の目が映し出す美しい色合いには勝てていないんだ。本当に綺麗な風景や美しい場面を見たいなら僕は自分の目で見ることをオススメする」
僕は一気に吐き出したので一度息を吸う。彼は続きを待っているようだった。
「だから写真の役割は綺麗に撮ることじゃないんだ。もちろん、綺麗にというか丁寧に撮ることは必要なんだけど。写真はすべてをそこに留めるんだ。五感の体験や人の感情も。だから僕は今回インスタントカメラを選んだんだ」
僕は饒舌に語ってしまったことを若干後悔した。しかし杞憂だった。
「お前そういうのやっぱかっけえよ」
僕らは互いを改めて認め合い出国を心待ちにしていた。