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第1話

ゾウとカレー
ゾウとカレー。それしか浮かばなかった。
今は

「今日の英語の授業はここまでになります」
真面目の代名詞のような眼鏡の先生が声をかける。僕らは委員長の号令に従い挨拶を済ます。あとは帰りのホームルームを残すだけだ。眼鏡の先生と入れ替わりで担任の先生が教室に入ってくる。
「そのまま、ホームルームやるぞ」
僕らは崩れかかった姿勢を前に戻す。
「修学旅行旅行先が決まりました」
待ってましたと言わんばかりの反応がクラスを覆う。男子は歓声をあげ、女子は近くの同性と小さく話す。
「修学旅行旅行先は」
唾を飲み込む音がシンクロする。何人かはリアクションを用意しているように見えた。
「インドです」
クラスに静寂が訪れた。用意していたものはどうやら不発に終わったようだ。えー、なんでインド、どこそれ。さっきとは打って変わった勝手な声が上がる。
「決まったものは仕方ないので楽しみましょう」
不満の声は鳴り止むことを知らない。
「はい。今日は解散」
形だけ先生に感謝を述べる。ありがとうございますなんて今の状況に一番適していない。僕はゾウとカレーのことを考えていた。


「いくよー。はい、チーズ」
僕は校門へ向かっている。その行く手を阻まれていた。
「あっ、ごめんね」
自撮りをしていた集団の中の1人が僕に気がつく。僕は軽く会釈して歩み始める。自分を被写体にして何が楽しいのだろう。僕にはわからない。写真はいいものだ。その場にあるすべてを閉じ込める。空間も雰囲気も人の想いすらも。それでも自分を被写体として閉じ込めたいとは思わない。
「おーい」
後ろから声がした。僕はそちらを向こうとした時、肩に手を回された。走ってきたらしく勢いがそのままぶつかったので若干痛かった。
「今帰りだろ。一緒に帰ろうぜ」
「いいよ」
僕は軽く応えて歩き出す。
「修学旅行インドだってな」
おそらく、クラスの大体の人の話題はこれで持ちきりだろう。僕も驚いた。
「でもさ、面白そうじゃね」
明るい笑顔をこちらへ向ける。自分の知らないところへ行けるというのはワクワクするものだ。
「そうだね」
僕はその熱を隠しつつ応答する。
「実は楽しみだろ」
鋭い。
「まあね」
「もうちょい表情に出るといいな。未来の写真家は修学旅行にワクワクしてたって情熱大陸で言うわ」
馬鹿なことを言ってる。説明し遅れたがこいつは僕のクラスで唯一、僕がカメラを溺愛してることを知っている友達だ。カメラで食べていくのは難しいからあまりひけらかしたくはないのだ。それを知っていて丁寧に接してくれる。とても良いやつだ。
「インドのこと、図書館で調べてきたんだよ」
喋り方からは馬鹿っぽそうに聞こえるが意外と真面目なのだ。
「インドって意外と英語で何とかなるらしい」
そのあとは今はエンジニアがインドではきちんと食べて行ける職だとかクリケットが盛んだとか階級社会がまだまだ根深いとかいう話だった。
「お前、英語の成績いいから楽しめるだろうな」
「そうだといいな」
そんなこんなを話しながら僕らは各自の家に帰っていった。