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第5話

#4 見えない暴力






そっと深呼吸して。扉の前に立つーーー

時刻は12時40分。丁度午前の授業も終わって昼休みの真っただ中。

がやがやと、おしゃべりの止まない教室の扉。



(だいじょうぶ、だいじょうぶ)



何が、“だいじょうぶ”何だろうって。

自分でツッコミを入れながら。息を呑み込んで、扉をそっと開けた。





―――――――― 一瞬。

静かになる、教室。



でも、皆私の姿なんて見えなかったみたいに。

直ぐに視線を逸らして、お喋りのざわざわは復活する。



私は誰とも、視線なんて合わせない様に。

注意深く歩きながら、そっと自分の席に着席する。



「うわっ草壁さん来たんだ」

「昼間から登校とか、超重役出勤」

「しっ聞こえるってば」



(ばっちり聞こえてますけど……)



相変わらず、見えない言葉の暴力は止む兆しなんてやっぱり見えない。



鞄から取り出したお弁当。

親に手作りして貰えるのは、幸せな事。その筈なのに。

今日もお弁当の味はしなかった。











長い一日がようやく終わり、太陽が西の空に傾いていく。



(“孤独”って、ただそれだけで、何て言うか一日が途方も無く長く感じるよ……)



帰り道をとぼとぼ辿りながら。誰に言う訳でも無く、そんなひとりごとを脳内でこぼして。



もう、慣れてる。無視にも、時折耳に侵入してくる悪口にも。

慣れてる、慣れてる……本当は慣れてなんてないけど。

心が死んじゃってるみたいだ。



誰も居ない、帰り道は世界に色が付いてないみたい。



(今日はあの場所で一日過ごしたかった……)



時々、どうしようもなく学校に行きたくない時。

学校に行ったフリをして、あそこで一日中過ごすのが好きで。

ただ、誰とも喋らない。

綺麗な景色と、柔らかい自然。ちょっとした非日常。



それだけで、何かを忘れることが出来る気がして。



って言っても、雨の日は勿論行けないし。あの場所を見付けたのはつい一か月前のことで。

勿論真夏とか真冬はきっと、あの場所に居れる訳じゃ無いんだろうなってことや、もし誰かに見付かってしまったり、変質者に遭ったら嫌だなとか、そういうことは考えないワケじゃないんだけど。



(それでも、ちょっとでも何かを忘れられるなら、少しだけしあわせだったのに……)



あの男の子。何者なんだろう。

やけに親し気に話しかけて来たけど。

一応、おんなじ学校の男の子では無い事は確かだった。



(またあそこに行ったら、会っちゃうのかな……)



それから一週間。私はまた死んだように色のつかない日常を繰り返した。