……下駄箱。
登校して、下駄箱を覗き込む。
……上履きが上下さかさになって入ってる。
(今日も平常運転……か)
やり場のない小さな溜め息をついて。
今日もまた重苦しい一日が始まることに、言い様の無い嫌悪感を覚えた。
*
気が付いたら、クラスに私の居場所は無い。
友達って、何なんだろう。
ある日を境に、理由も分からないままに。
“無視”される様になってしまって。
元々、とても気の合う友達が居ないクラスに配属されてしまった私は、新しいクラスでも最初からちょっとぎこちなかった。
何とか友達を作って、少し背伸びして少し仲良くなったグループの子たちと一緒に過ごす様になったけど。
きっと、最初からあったぎこちなさの差は埋まる事なんかなくて、広がっていく一方だったんだと思う。
些細なほころびは、やがて大きな穴になって。
いつの間にか無視はクラス全体に広がって。
小さな“いじめ”とも言えないような嫌がらせまで起きる様になってしまった。
きっと“誰か”が犠牲になっていれば。
その子を見下して。
自分達は安全圏で。
“私”がいることで、自分たちは“上”だって安心して。
本当の理由は分からないけど。
(休み時間、本当に憂鬱)
何をしても、影口を言われそうな気がして辛くて。
私は机で寝たふりをして過ごすことすら多くなって。
「草壁さん、また寝てるー」
「ほんとだ、睡眠障害?」
とか言う声が聞こえて来るけど。
聞こえないフリをしても、心の奥にずしずし刺さってく。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!