第19話

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2020/03/17 08:32
炭治郎side
俺の兄は、この間倒れた。
それから俺は兄を心配し、よく炎柱邸に足を運んでいた。
そして今日も兄さんの世話をするために屋敷へ向かう。
コンコン
炭治郎「兄さん?いる?」
声をかけたが返事がない
任務でも行っているのかと思い、帰ってくるまで上がらせてもらおうとしていた時。
炭治郎「……ん?兄さんの匂い…?」
屋敷の奥の鍛錬の時に使っている庭に兄さんの匂いがした。
その匂いと共に流れて来るのは哀愁。
兄さんに気付かれないようにそっと奥へと足を運んだ。
壁から頭だけ出して庭を眺める。
炭治郎「……っ!」
そこに居たのはまるで桃源郷かくやの舞を踊る兄の姿だった。
庭に鬼が入らぬように植えられている藤棚と見事にあっている。
普段、芸術はとんと知らないような自分でも素直に美しいと思えた。
炭治郎はその姿に魅せられ、自然と涙を流した。























ひかるside
舞を踊る腕を降ろし、先刻からこちらを眺めている気配の正体に目を向ける。
星「炭治郎…来てたのか」
炭治郎はそっと壁の奥から出てくると目を擦りながら俺を見た。
炭治郎「兄さん…その舞は」
星「藤の舞。ずっと前から俺の十八番」
炭治郎は目を伏せた後、俺に目を向けた。
炭治郎「もう一度、踊って欲しい。」
星「あぁ、もちろん。これは俺の可愛い弟の為の舞だから」
炭治郎はハッとした後、どこか悲しそうな顔をした。
炭治郎が気付いた通り、この舞は平安時代、無惨が少しでも笑顔になれるように作った舞だった。
俺はもう一度、扇を取ると目を閉じて、集中する。
一瞬、強い風が吹き、庭の藤棚の花が一斉に散らんとしていた。
















炭治郎「兄さんから、哀愁の匂いがする…。」
ひとしきり舞を舞った後、2人で縁側に腰掛け、炭治郎が口を開いた。
星「……」
炭治郎「兄さん…まさか無惨と…」
星「……ごめん…俺は無惨の兄貴だから、」
炭治郎「無惨の兄貴は鬼舞辻有惨だ。兄さんは竈門星。もうそれじゃダメなのか?前世まで引きずる必要はない!わざわざ死ぬ必要なんかっ!」
星「……もう、決めたことだ」
炭治郎「そんな」
星「残った禰豆子達のこと、頼んだぞ長男!」
炭治郎「俺は…」
星「もう、この話は終いにしよう、晩御飯食べてくんだろ?炭治郎の炊いたご飯が食べたいんだ…」
炭治郎「……うん」
星「じゃあ頼んだz…」
その時、俺の鴉が静かにやってきた。
炭治郎「あれ?兄さんの鴉?今任務はないはずなのに?」
鴉は俺にそっと炭治郎に聞こえないように耳打ちで要件を伝えた。
星「そうか…分かった」
炭治郎「兄さん?」
炭治郎の顔が心配しているような顔になった。
星「大丈夫、炭治郎はここで待っていろ」
炭治郎「……だめ…だめだ、行かないで」
炭治郎は何かを察したように俺の袖を掴んだ。
炭治郎が察した通り、俺は今から産屋敷邸へ行く。
理由は無惨に会うため。
星「炭治郎…あとの事は任せたからな」
炭治郎「兄さ…」
そう言って未だ俺の袖を掴んでいる炭治郎の頸の後ろに軽い手刀を打てば炭治郎は気絶していまった。
星「ちょっと手荒になったけど…許せ…。」
俺は炭治郎を自分の屋敷の布団に寝かせ、深く深呼吸した後、思い切り地面を踏み込んだ。

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