佐久間side
「頂きます」
涼太と2人でテーブルを挟む。
なぜこうなったのか。
遡る事数分前…
「もう夕飯の準備してる?」
帰宅してしばらくすると、涼太が訪ねて来た。
「ううん、まだ。どして?」
「翔太が友達の家行くから夕飯要らないって言うんだけど、もう2人分作っちゃったから佐久間食べるかなーって」
「え、食べる!」
「じゃあ上がって」
こうして俺は今涼太をテーブルを挟んでいる。
「今日ね、あなたに会ったの」
「元気だった?」
「うん、元気そうだった」
「それはよかった」
優しく微笑む涼太。なぜだろう。涼太には全て話したくなる。
「俺あなたとやり直したい。」
「出来るよ、佐久間なら」
「うん、頑張る」
話に間ができたタイミングで、涼太のスマホが鳴った。
「翔太?」
「俺さ、今誰の家にいると思う?」
涼太のスマホのスピーカーから、興奮した様子の翔太の声が聞こえる。
「さあ…友達の家に行くんじゃなかったの?」
「そうなんだけどさ、あなたがいるんだ」
「あなたが?」
驚いて涼太を見つめる。涼太もまた、驚いた顔で俺を見ている。
「まあ、詳しい事は今度話す。あ、今日は泊まってくから。じゃーね」
ツーツーという無機質な音だけが鳴り響く。
え…?あなたがいる…?
あなたはやっぱりあの男の家にいるってことか…………?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。