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第46話

エピローグ
鮮やかな桜が狂い咲く4月の上旬。




全ての支度が終わり、大きな鏡の前に立ってドレス姿の自分を見つめる。




大きく深呼吸をすると、髪をオールバックにまとめてスーツを着た兄が入って来た。





「緊張してる?」




「してない」





嘘。緊張で上手く笑えない。





「顔引きつってるぞ?笑」





と、兄は私の頭をポンポンと叩いた。




「大丈夫だよ。あなたなら」




クシャっと笑い、兄は「じゃ、待ってるから」



と言って部屋を出て行った。




式場のスタッフさんにに言われて、控室から移動する。




「…大丈夫。私なら大丈夫。」





ドレスの裾に縫われた金木犀の刺繍を指でなぞると、自然に緊張は解れて行った。




ゆっくりと開く扉。




一歩ずつ、丁寧に踏みしめながらバージンロードを歩く。





自分に向けられた温かい視線。






幼い頃から苦楽を共にしてきたふっか。



高校生の時からフラッと訪れては、話を聞いてもらっていた向井さん。



絶望の淵にいた私を救ってくれたラウール先生。



腕を切った私を救ってくれた阿部ちゃん。



実は警察官で、普段は沢山一緒に笑った翔太。



美味しいご飯を沢山食べさせてくれた涼太。



みなみさんのお母さん。彼女の膝の上には、満開の桜のような笑顔で笑うみなみさんがいる。



10年以上ぶりに再会し、私の面倒を見てくれたひーにい。



ずっと変わらない、柔らかい笑顔で微笑む父と母。




そして…




向かい側にいる、大好きな人。




足をとめる。




走馬灯のように思い出した過去の記憶が、今の記憶と重なる。





牧師さんによって式は着々と進められていく。





お互いに指輪をつける。




そして…誓いのキス。




唇を離すと、顔を赤らめながら笑う彼がいた。






「もう…離さないから」




真っ直ぐな目でいう彼に、まだ呼び慣れない名前に少し照れながら返す。




「私も…大介から離れないから。」






笑いあう2人と、周りからの温かい声。






この先、高く越えられない壁にぶつかったとしても…





大丈夫だ。





だって私には、この照れ屋でアニヲタで優しくて、真面目で面白くて無邪気で………





誰よりも私を大切にしてくれる人がいるのだから。






暖かい春風に乗って、ふんわりと切なげな、金木犀の香りが鼻をかすめた気がした。







                                      夜長唄___ END