あなたside
最初は探り探りだった私たちも、すっかり話し込んでいた。
店を出て、夕日が綺麗に見える高台に行く。
真っ赤に染められている街を、肩を並べて眺めていると、彼が口を開いた。
「…また、あなたと見たいって思ってた」
「…私も、隣にさっくんがいたらなって、何度も思った。」
「ごめん、あなた」
「ん?」
さっくんが私の方を向き直す。
「沢山傷つけてゴメン。」
「…私も、勝手に居なくなってゴメン。」
フワッと包み込まれるように、彼に後ろから抱きしめられる。
「…遅い」
「うん、」
「ずっと待ってた」
「…ごめん、」
「会いたかった」
「…待たせてゴメン、でももう2度と離したくない」
何か言う前に、口を塞がれる。
唇を通して、脳が溶けてしまいそうなほどの熱が伝わってきた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。