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第3話

第一話-2
511
2022/04/01 09:00
 その様子を見て、急に不安になる。未成年は取り引きできないのだろうか。

 つい先日バイト情報サイトで目にした、【初心者・学生歓迎! 短期可。フロアレディ 時給4000円】とか【話すだけの簡単なお仕事です。ガールズバー 時給3000円】という文字がチラチラと脳裏をぎった。
青年
青年
モンブランのマイスターシュテュック146、ゴールドコーティング
遠野梨花
遠野梨花
え?
青年
青年
この万年筆のことね
 男の人はそう言いながら、私が持ってきた万年筆をじっくりと眺める。そして、ちらりと視線を私の足下に移動させ、すぐに万年筆へと視線を戻した。

 私は何かあるのかと思って自分の足下を見る。去年の夏に買った白いサンダルが目に入ったけれど、何もなかった。シロは……見えるわけないし。
青年
青年
どうすっかな
 男の人は万年筆を眺めながら片手を顎に当てると、トントントンと人差し指の先でカウンターテーブルを叩く。

 足下ではシロが「ニャー、ニャー」と忙しなく鳴いているけれど、私は何事もないかのように澄まし顔を装った。
青年
青年
あんた、質屋の仕組みは知っている?
遠野梨花
遠野梨花
はい。物を売るんですよね?
青年
青年
違うよ。預けるんだよ
遠野梨花
遠野梨花
預ける?
 私は眉を寄せ、男の人を見返した。

 男の人は私が持ってきた万年筆を元々入っていた箱に戻すと、カウンターのペン立てに入っていたボールペンを手に取り、紙に何かを書き始めた。
青年
青年
質入れっていうのは、預けた物を担保に金を借りることだ。借りた金を返せば、預けていた品物は手元に戻ってくる
遠野梨花
遠野梨花
返ってくるんですか?
 私は驚いて、思わず聞き返した。てっきり、質屋イコール中古品を買い取る場所なのだと思っていたのだ。
青年
青年
そう。ただ、質入れした物をこちらが保管しているのは三ヶ月間。これを流質期限っていう
遠野梨花
遠野梨花
三ヶ月……
青年
青年
この期限を過ぎると質入れした商品── 質草しちぐさっていうんだけど、その所有権は預けた人から金を貸した質屋に移る。俗にいう質流れってやつだ。質流れした商品は売りに出される
 男の人は手元の紙に矢印を書き、今のところに★印を、三ヶ月後にも印を入れた。
青年
青年
ただ、売らずに保管しておいてもらうこともできる
遠野梨花
遠野梨花
売らずに保管?
青年
青年
ああ。利上げって言って、預けた質草の質料──利息を支払うんだ
遠野梨花
遠野梨花
利息……
青年
青年
そう。利息を払いさえすれば、保管期間は一ヶ月単位で伸ばされる。以後は同じ
 男の人は矢印のさらに一ヶ月後のところにも印を書き込んだ。
遠野梨花
遠野梨花
一ヶ月……
 さっきから、オウムのように言われた言葉を返すばかりだ。

 質屋という業種について、私は全くわかっていなかった。ただ単に中古品を売ってお金をもらう場所だと思っていたから。

 けれど、返金さえすれば質入れした商品を返してもらえるというのは魅力的だった。

 なぜなら、あの万年筆は──。
青年
青年
あとは、買い取りもできる。その場合は、すぐに売りに出されるから、やっぱり返してくれと言われても、どうしようもない
 考え込んでいると、男の人がそう付け加えた。
遠野梨花
遠野梨花
質入れでお願いします!
 私は即座にそう言った。男の人は、箱に戻した万年筆をもう一度手に取ると、それをじっくりと眺めるように目を細める。
青年
青年
…………
 黙り込む男の人に話しかけるように、足下でシロが「ニャー」と鳴いた。