その様子を見て、急に不安になる。未成年は取り引きできないのだろうか。
つい先日バイト情報サイトで目にした、【初心者・学生歓迎! 短期可。フロアレディ 時給4000円】とか【話すだけの簡単なお仕事です。ガールズバー 時給3000円】という文字がチラチラと脳裏を過ぎった。
男の人はそう言いながら、私が持ってきた万年筆をじっくりと眺める。そして、ちらりと視線を私の足下に移動させ、すぐに万年筆へと視線を戻した。
私は何かあるのかと思って自分の足下を見る。去年の夏に買った白いサンダルが目に入ったけれど、何もなかった。シロは……見えるわけないし。
男の人は万年筆を眺めながら片手を顎に当てると、トントントンと人差し指の先でカウンターテーブルを叩く。
足下ではシロが「ニャー、ニャー」と忙しなく鳴いているけれど、私は何事もないかのように澄まし顔を装った。
私は眉を寄せ、男の人を見返した。
男の人は私が持ってきた万年筆を元々入っていた箱に戻すと、カウンターのペン立てに入っていたボールペンを手に取り、紙に何かを書き始めた。
私は驚いて、思わず聞き返した。てっきり、質屋イコール中古品を買い取る場所なのだと思っていたのだ。
男の人は手元の紙に矢印を書き、今のところに★印を、三ヶ月後にも印を入れた。
男の人は矢印のさらに一ヶ月後のところにも印を書き込んだ。
さっきから、オウムのように言われた言葉を返すばかりだ。
質屋という業種について、私は全くわかっていなかった。ただ単に中古品を売ってお金をもらう場所だと思っていたから。
けれど、返金さえすれば質入れした商品を返してもらえるというのは魅力的だった。
なぜなら、あの万年筆は──。
考え込んでいると、男の人がそう付け加えた。
私は即座にそう言った。男の人は、箱に戻した万年筆をもう一度手に取ると、それをじっくりと眺めるように目を細める。
黙り込む男の人に話しかけるように、足下でシロが「ニャー」と鳴いた。