ハルアキくんと同時に振り返ると、そこにいたのは、浴衣を着た、ハルアキくんと同じ歳くらいの女の人が三人と男の人が二人。
全くの他人で、首を傾げた私とは反対に、ハルアキくんは驚いたように言った。
「お前ら!来てたんだな」
「まぁな。お前に先約がなけりゃ誘ったんだけどよ」
「そーそー。なに?彼女?」
「浴衣着てないから違くない?」
「判断材料そこかよ。まぁ、普通に祭り来た感じだ」
笑ってツッコミを入れ、楽しそうなハルアキくん。
……誰?何?知り合い?
「じゃあマジで春明彼女いないんだ。あたしと付き合ってみる?」
「えっ……」
あ、と思ったがもう遅い。その場の全員の視線が私に注がれていた。
真っ赤になって俯くと、ハルアキくんがポンと頭に手を置いてくれた。
「やめろよそういう冗談。こいつ思春期真っ只中なんだから」
「おいおい、誰だその子。小学生?中学生?」
「中一だ。な、あなた」
「……う、うん」
「へー!じゃあこの子と祭り来たんだ今日」
付き合ってみる?とハルアキくんに聞いていた女の人が目を向けてくる。
大人っぽくて、綺麗で、女の人って感じの体つきをしていた。
自分を見下ろしてみる。当たり前だが、胸も何もない。
「そういやさ、昨日……」
6人で会話が始まり、私はぽつんと取り残された。
――ハルアキくんって、友達の前だとこんな感じなんだ。私、子供扱いされてたんだ……。
……このままじゃ、私よりずっと素敵な女の人にハルアキくんを取られちゃう!
「ハルアキくん、来て!」
「っ、あなた!?あ、じゃあなお前ら!」
そうしてハルアキくんの手を引っ張り続けて、人が比較的少ないところで止まって、告白した。
私にとって、大きな大きな出来事。
――それなのに、ハルアキくんはもう忘れたのかな。
「……教えない」
意志を示すため、自身の唇を固く閉ざす。
ハルアキくんは気になるような素振りを見せていたが、諦めたのか、「……わかった」と少し後に呟いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!