第6話

五話
私の席は前から二列目で、話しているのは三列目。ハルアキくんにも聞こえてそうだな、とぼんやり思いながら、勝手に耳に入ってくる会話を聞き流す。

「ボランティア係って要はあれでしょ?なんでも係っていうか先生の雑用でしょ?」

「そうそう。しかも一人って、最悪だよね。先生と二人っきりとか耐えられない」

「それな!この高校年寄りしかいないもん……あ、でも今年は宮野先生か。いや、ダメだ、緊張して怪我するわ絶対」

「よし、あなた。ボランティア係やってくれ」

唐突に別の声が割り込んできて、最初誰の声だとかはわからなかった。

教室内が静かになって初めて現実に意識が戻ってきた。

え?……私?

「賛成の奴拍手ー」

「え、ちょ」

抗議の言葉は大音量の拍手にかき消された。

――みんな、自分がやりたくないからって……!

「頼んだぞあなた」

とてもいい笑顔で言われ、苛立ちが増す。漫画だったら、私のこめかみには怒りマークが浮かんでいることだろう。

ハルアキくんもハルアキくんで、推薦してこないでよ……!!

恨みを最大限に込めて睨むが、ハルアキくんは完璧にスルーして「あ、前期で委員も係もやらなかった奴は後期で優先的に入れてくからそのつもりでな」なんて言って遠回しに立候補を促している。

まじかよかった……と一瞬でも安堵してしまった自分が憎い。


十数分後、係も全て決まった。

「よし、じゃあ確認するぞ。委員長、上田(うえだ)」

「ハイ!」

「元気いいなお前。えー、副委員長、……」

そうやって、委員名、担当する生徒の苗字を順に読み上げていくハルアキくん。

やがて委員が終わって係に入り、何個目かを読んだあと、不意にハルアキくんが手元のプリントから顔を上げた。

思いっきり視線が合う。

驚きでドキッとした私に、ハルアキくんは少しだけ微笑んだ。

「ボランティア係、――あなた」

「……はい」

聞こえるか聞こえないかくらいの声量で返事する。

しかしそれを咎めるでもなく、笑みを引っ込めたハルアキくんは確認を続けていった。

なんとなく、こっち向かないかな、って気持ちで、私はプリントに目を落とすハルアキくんの顔を見つめていた。