第12話

第11話(最終回)
39
2024/03/11 11:06


  “「ほんとにどうにかなるのなら何でもするよ」”



俺が一番聞きたくて一番聞きたくなかった言葉
これを聞いたら絶対に……俺はズルをする…

だからもう一回ちゃんと聞く


『本当に何でも………?』

やめて……そんな顔しないで…
これじゃあ押さえてた気持ちが爆発するじゃんか

俺が寝ていたからか電気が付いていない…

だけど、その暗闇の中でも実玖が顔を赤らめたのは分かる…


「うん…治るのなら……」


だからっほんっとに……みーはいつでもズルいや

ーーーーー



『本当に何でも………?』

と聞かれ、私が顔を赤らめてしまったのは幼い頃からの気持ちが少し期待したからである

でも治るのなら力になりたい…そう思って

「うん…治るのなら……」

と、言った




次の瞬間だった急に目の前が真っ暗になった
いや…反射的に目を閉じてしまった



そして、数秒置いてから気づいた唇に何かに触れてる…

柔らかい何か…


そして、視界が広がる…
翔がゆっくり離れていく…


そこで理解した…私今…翔に……
と頭が回った所で

『好き……ずっと…実玖……いや“みー”の事』
少し照れ臭そうに真っ直ぐ私の目を見て言った
『へ、返事はいつでmっ?!』

待ちきれなかった…
いや、心の奥底のどこかでずっと待ってた

触れるだけのキス



小さい時からずっと好きだった…忘れてたなんて嘘…
よく“初恋は実らない”と聞くから無理やり忘れさせていた

本当は下の名前で…“かー”って呼びたかった…でもそれは昔……今は先輩と後輩…

少しでも忘れようとしたけど出来なかった…出来るわけがないのに…
『???』

流石に思考が追い付かないのかあたふたしてる。少し可愛い…

『も、もしかして…?』

少しきょどりながらも私に確認を取りに来る


だから私は……
「だからッ“かー”はいつも遅いの!!」


いつぞやの記憶を引っ張り出して翔に言う

ただ1つ違うのが今は涙が出てること…






~数年後~



[朝雛!昇格おめでとう!]

「ありがとうごさいます!」
あれから数年私と藤宮もとい“かー”とは晴れて付き合うことにしたが、それと同時に私の移動も決まった。
そこではバンバン成果を出しついに部長に就任することになった!

だけど…
[朝雛さ~ん!これって~…]
[朝雛部長!この書類は…]
[朝雛部長この企画について…]

毎日これで息抜き時間がない…
これは前の部長に文句言ってごめんだわ…

藤宮は私が居なくなった穴埋めとして営業に行かされているらしい。夏はドンマイだね


遠くで時間を知らせる音楽が聞こえる
「定時まであと1時間か…」
実は最近藤宮と会ってない
お互い忙しいからしかたないけど…
会いたいものは会いたいのだ

やっとの思いで付き合えたのにこれじゃあ意味がない…

まぁ付き合えただけでも奇跡か…
しかもお互いがお互いに初恋だったとは…
これは奇跡の他ないか…

適当に部下の仕事を見回っていると新人の子の机にまだ大量の書類が残っていた
「鈴木さんそれ…」
[朝雛部長~助けてくださぁい]
「ん~ちょっと待っててね」

他に大量の書類を持ってる人がいないか確認すると鈴木さんしか大量じゃなかったため鈴木さんのところに行き…
「じゃあ半分…より少し多く貰ってくね」
[部長!ありがとうございます~!!]
「今度コーヒーよろしくね~」
[今行ってきますよ!!]
「今は書類ね」


そんなこんなで定時が過ぎた
みんな心配して手伝うって言ってくれたけど、私は大丈夫と言って皆を帰らせた

部下の仕事は上司の仕事だしね
鈴木さんも手伝うと言ってくれたが帰らせた。


こうやって1人で残業をしていると、前の部署を思い出す…あ、でもあの時は藤宮も居たから2人か…


1人で思い出に浸っていると廊下からコツコツと足音が聞こえてきた

誰か忘れ物かな?とか思いながら無視してたら
コンコンコン
部署の扉がノックされた


急な音にビックリして扉の方を見ると

『皆帰ってるのに1人残業ですか部長?いや先輩?』

これまたビックリ藤宮が居た
久しぶりに見た気がして自然と涙が出そうになるも押さえる

その間にも藤宮は『1人でこの量?』とか『人がよすぎる』とかブツブツ言いながら私に近づいて来た。

『んで?なに手伝えばいい?』

「手伝ってくれるの?」

『そりゃあ…先輩が困っているなら』

「……でも分かる?」

『舐めないで下さい?』



そのあと藤宮のお陰でかなり早く終わった

『いや~2人で残業とか超久しぶりだったな~』

「いや、ほんとにそれ」
「本当にありがとう」

『いや…今日営業早く終わって…先輩の部署の人に聞いたら1人で残業してるって聴いたから…』

「それで…来てくれたの?」

『まぁ…可愛い彼女のため…なら』

「~っ!翔~!!」

『ちょっやめ!』

カーンカーン会社の謎の8時チャイムがオフィスに響き渡る

「このチャイムなんであんだろう…」

『ほんとにそれ意味ないじゃん』

『てか8時か…』

「8時だね…」

『実玖……いや、先輩』

『あの…まだ早いですし…』










『一緒に飲み行きませんか?』








                    ~Fin~

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