その後、何があったのかはよく分からない。
でも、気づくと私は家にいて、
お母さんと、お父さんから話を聞いていた。
お母さんとお父さんは、
世界的にも、大分有名で、
強いヤンキーだということ。
私の周りにお友達が寄ってこないのは、
恐らく、お母さんとお父さんのせいだということ。
そして、恐らく私は、
お母さんの目の良さと、
お父さんの耳の良さを受け継いでるということ。
それを聞いた私は、
ただ、お母さんとお父さんを、
カッコイイと思った。
だって、お母さんとお父さんは、
ヤンキーだからと言って、
私のことまで殴る訳じゃないし、
普通に優しい親だったから。
お友達には優しくしなさい。
お母さんはよくそう言っていた。
お母さんとお父さんは、
ヤンキーと、親、
その区別がしっかりついている、
ちゃんとした人。
私は、小学5年生で、
そう確信した。
そして私は、両親のような人になりたくて、
武道を教えてもらった。
それから2年。
私は中学1年生になった。
そんな時、お母さんとお父さんは、
急にヤンキーを引退した。
あまりにも急だった為、
私も大分戸惑ったが、理由を聞くと、
“負けたから”
その一点張りだった。
えっ?負けたことなかったの?
そう思ったが、それはグッと飲み込んだ。
“誰に?”
と聞くと、
“女の子”
“さとみと同い年の、この近くに住んでる女の子”
と返ってきた。
私は、凄く驚いた。
お母さんとお父さんが、
私と同い年の、女の子に負けた…?
いや、有り得ない。
お父さんとお母さんは、強い。
なのに負けた…?
私は、興味が湧いた。
お父さんとお母さんを倒した、
その女の子は誰なのか?
どれだけ強いのか?
そして、ちょっとした復讐心もあり、
私は、その女の子を探し始めた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!