時はあっという間に進み、
気づけば、3月ももう下旬。
桜のつぼみは、もう膨らんでいる。
その中で、私は焦っていた。
そろそろ、七瀬との決着をつけないと、
本当に桜の時期と被ってしまう。
でもそれ以上長引くと、
七瀬の余命にも関わってくるだろうから、
七瀬もそろそろ手は打ってくるはずだ。
なのに、全く進展がない。
七瀬の家に押しかけても、
誰も出てこないし、
七瀬の家にも、シェアハウスが近いため、
変な手出しは出来ない。
第一、結局美桜達3人は、
あれ以降私達に近ずいてくることもなく、
思い出す気配もない。
ニュースでも、
「後少しで、桜も満開になるでしょう。」
とか言ってるけど、
それが1番困るんだ。
高校も無事卒業して、
大学入学を控えた今、
あまり大事は起こしたくない。
が、私は念の為、
桜の時期に家を出ないように、
食料と日常品の買い溜めをしている。
そして今日も、
マスクやらなんやらの買い出しに行く。
外に出て思う。
この時期にしては、随分と暑い。
これで、桜が咲くのが早まらなければいいんだけど…
と、自分で思った。
そして見事にここから、
七瀬の思う壷にハマるのであった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!