「 それでは本番いきまーす!3!2!…… 」
スタッフの合図でエンディングの撮影が始まる。
私の足はカメラに映らないようにするらしい
目線の先を見ると、まなさんが楽しそうな表情で私を見ている
( あのクソ女… ) ←
そんなに私が不幸なのが嬉しいですかそうですか!!
ニヤニヤしやがって
流「 …… 今顔やばいで 」
「 え、マジ? 」
流「 うん。般若みたい 」
流星に言われ、慌てて表情管理をする。
( そうやって笑ってられんのも今のうちやぞクソ女 )
もうすぐ時間が来る。多分あと数秒で。
「 … あ!?カット!! 」
撮影中いきなり監督がカメラを止める
止めるというか、止まった
「 何これ!?なんでタイマーになってんの!? 」
「 こっちもカメラ止まっちゃいましたー! 」
別のカメラを操作していたカメラマンさんからも
そう口々に聞こえてくる。
「 おい誰だよ、最後にカメラの点検したやつ! 」
監督がスタッフを見渡すと、
皆必死に自分じゃないと首を振る。
その中に一人、真っ青な顔をして立つまなさん。
( ……あーあ、可哀想 )
「 最後に確認任されてるのまなじゃないの? 」
「 確かそうですよ、俺見ましたもん 」
「 か、確認はしましたけど!
タイマーなんてなってませんでした! 」
「 でも実際なってるだろ。お前の確認不足だ 」
監督がまなさんを怒るのを、
出演者も固唾を呑んで見守る。
和「 あなた、違ったら悪いんやけどさ 」
「 何? 」
和「 いや、正直違ってほしいけど、 」
「 だから何 」
和「 あれ、あなたの仕業じゃないよな? 」
祈るような目で私を見てくるはっすんに、
静かに微笑んであげた。
この世の終わりみたいな顔をしたはっすんを無視して、
目の前で怒られ続けているまなさんと監督の元に近づく
「 ……あの、監督さん、 」
私が来たことに驚いたのか、目を開いてこっちを見るまなさん
「 すいませんあなたさん。
ステージの件も、収録も中断してしまって…… 」
納得いかないような顔で私を睨むまなさんに、優しく微笑む
「 大丈夫ですよ。失敗は誰にでもありますし。
彼女もわざとじゃないんでしょう? 」
なんて、本当は私の仕業なんやけど
つくづく自分って最低だなって思う
まぁ、タイマーセットしたのは恭平なんだけどね()
「 あなたさんには迷惑かけてばかりで…
おい、謝ったらどうだ? 」
「 ……すみません 」
そうそう、その顔が見たかった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。