第5話

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2020/04/19 12:02


今日は音楽番組の収録




朝から食べようと思っていたバナナを謙杜に食われて

若干イライラしながら局に向かった。




謙「 そんなに怒んないで下さいよ。

バナナなんていつでも栽培できるじゃないですか 」



「 何言ってんねん 」







バナナのことで気を取られていたら、

Bluetoothイヤホンがないことに気がついた。




( やっべ、どこで落としたんやろ )





来た道を戻ろうと思って、楽屋を出た。





和「 なるべく急いでや 」

「 はーい 」





記憶を辿りながら進んでいくと、

目の前に可愛らしい女性が立っているのが目に入った。



衣装っぽいのを着てるから、アイドルかな





( ……あ、あれって私のイヤホンやん )





彼女が手に持ってるのが私のイヤホンだと分かって、

急いで駆け寄る。





「 あの、そのイヤホン 」



「 ……え?あ、これ清瀬きよせさんのですか? 」





私の顔を見て驚いた顔をした彼女は

ふにゃっとした笑顔になって、





「 うわぁ、なんか運命的ですね!私清瀬さんの大ファンなんです!

まなって言います!仲良くしたいです! 」


「 お、おぉ… 」





すごく元気がある子やなって思って、

握手を求められたから握り返しておいた。






( …その手に持ってるイヤホンはいつ返してくれるんすかね )





未だ彼女の手にある私のイヤホンに視線を向けていると、




「 あっ、すみませんイヤホン返しますね! 」



「 あ、ありがとうございます 」






満面の笑みで返されて

つられてこっちも笑顔になってしまう。






周りにお花畑が見えそうな雰囲気で帰っていくまなさんの

後ろ姿を眺めながら、ため息をついた。




「 世の中にはあんなに可愛い子がいるんか…。

地球もまだまだ平和やな…… 」










イヤホンも見つかったことだし楽屋に戻ろうと思うと

ふと、手のひらの中の違和感に気づく。





「 ……あれ 」







返してもらったイヤホンの導線のちぎられた跡が目に入った






「 あ 」(察し)






 
…… いや、まだ決まったわけやないけどさ

女って恐ろしいな。

いや、決めつけてはないけどな







( あぁ、何も起こりませんように…… )





悪寒を感じながら、フラフラと楽屋に戻った。

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