及川「だああぁもうどこにいんのさあなたはっ!!」
岩泉「うるせぇうんこマン。」
及川「うんこマンって何!?」
ポケットに手を突っ込み、前を向いて隣を歩く岩ちゃん。
こっちなんて見ようともせず、スタスタと歩いていく。
全く…岩ちゃんてば照れ屋さんなんだから…っ☆
松川「で、どーすんのうんこマン。このままじゃ埒明かないけど。」
花巻「本当に心当たりねえの?うんこマン。」
及川「みんなしてうんこマンって言うのやめてくれない!?」
岩泉「黙れうんこ野郎。」
及川「岩ちゃーーーーーんっ!?」
みんな反抗期なのかな?
主将に対して辛辣すぎやしないかな!?
岩泉「つかよ、国見ならなんか知ってんじゃねぇの?」
松川「あぁ、それは俺も思った。」
確かに確かに、と同調するまっつん達。
それは俺も思ったことで。だけど…………
及川「俺もそう思って国見ちゃんに聞いたんだけどさ、“知らないです”の一点張り。」
花巻「でも、絶対知ってるよなあいつ。」
松川「言えない事情でもあんのかね。」
うーん、とみんな頭を悩ませる。
花巻「あなたん家行っても誰もいないんだろ?親は何してんの?」
何度かあなたの家に行ったけど、結果は同じで誰も出てこない。
あなたが居留守している可能性も拭えないけど、いつ行っても、いつ見ても家の中の電気がついていないのを見ると本当にいないのだと思う。
及川「あなたの親はだいたい家あけてるんだよね。元々あなたは親の仕事の都合で引っ越してきて、本当だったらまた引っ越さないといけない所をあなたは無理言ってここに残った。だから親が帰ってくる、というか様子見に来るのは仕事に余裕ができた時だけ。」
言葉にしてみて思い出した。
あなたは、ここに残りたくて。俺たちといたいって思ってくれて。
親の反対を押し切って今ここにいる。
……そう考えれば、簡単な事だった。
どうして、今まで忘れてたのかな。
“ 私、徹達といたい。バレーしてたい!! ”
“ バレー教えてくれたのも。楽しいって気持ち教えてくれたのも。全部、徹なの。 ”
あなたの訴えが、扉越しに薄らと聞こえてきて、
あなたをここまで動かせたことが嬉しくて。
俺のあなたへの想いは、どんどん大きくなっていった。
彼女を作って、別れて。あなたに慰めてもらおうと近寄って。
思えば、俺のやっていたことは本当に馬鹿らしい。
及川「俺、結構本気なんだよね。あなたのこと。」
今まで色んな女の子に告白されて付き合って来たけど、どの子もやっぱりどこか物足りなかった。
心のどこかに、ずっとあなたがいた。
最低だと思う。
こんなにもあなたへの想いに気づいていたのに、他の女の子と付き合って傷つけて。
……何よりも、あなたのことを傷つけて。
でも、この気持ちだけはもう揺るがない。
及川「俺、あなたのことが好き。」
初めて出会った時は、全然笑わない子だからただ笑顔にしてあげたいってだけだった。
あなたと関わるようになって、笑顔も増えていって。
眩しいその笑顔が、俺の心を照らしてくれた。
岩泉「うんこ野郎だな。」
及川「今それ言う流れじゃないよね!?」
岩泉「事実だろ、実際。」
岩ちゃんの言葉は否定しがたいもので、うぐっと喉をならす。
……分かってる、分かってるさ。
だから今、もう一度。
あなたに会って、“ちゃんと”話したい。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。