及川 𝒮𝒾𝒹𝑒
岩泉「帰るぞ、及川。」
あなたがいなくなってから、毎日がもの足りない。
バレーをしてても、笑っていても。どこか満ち足りなくて。
“ ずっと、バレーが嫌いだった。 ”
……そんなの。
“ バレーって面白いね!かっこいい! ”
…っ、そんなの。
及川「信じられるわけ…ないだろっ。」
今までのあなたと今のあなた。
どっちを信じるかなんて、そんなの考える必要もない。
“ 私もウシワカムカつくぶっ倒せー!! ”
…ねぇあなた。
俺、知ってるよ。
あなたが、“ちゃんと”バレーを愛してたこと。
ちゃんと、本気だったこと。
“ 徹っ!サーブ教えて!! ”
“ おっ、あなたもついにやる気になった!?
及川さんがいくらでも教えてあげるっ! “
“ 徹の顔に本気の1本ぶつけたい! ”
“ なんで!?なんのために!? ”
……あの日々が。あの笑顔が。
偽物だったなんて、信じないよ。俺は。
あなたがなんと言っても。俺は絶対に信じない。
及川「岩ちゃん。俺、やっぱあなたのこと……。」
岩泉「あぁ、俺もだよ。」
及川「……うん。」
“ 私、及川のこと信じてる。 ”
“ 私が知ってるセッターで、
及川は1番凄いセッターだよ! ”
及川「・・・。」
俺自身、自分で分かってる。
ただ現実から目を背けていたこと。
……分かってるんだ。
あなたが何かを隠していて、
それが、俺たちのことを思ってだってこと。
俺がどれだけ。何年あなたのことを想い続けているか。
それでいて、どれだけあなたのことを傷つけたか。
……ちゃんと、分かってるさ。
俺がどこまでも、どうしようもない男だってこと。
及川「…俺、もう1回あなたに会ってちゃんと話す。」
岩泉「俺も行く。俺も納得行ってねぇからな。」
岩ちゃんだって思うことがあるのだろう。
覚悟を決めた顔で俺にそう伝えてきた。
松川「なぁ花巻、俺らのいないとこで勝手に話進めてんだけどどうします?」
花巻「とりあえず及川に顔面サーブかな。」
松川「それだ。」
及川「ちょっと君たちなんて物騒な話してんのさ!!」
後ろから聞こえてきた会話。
2人に指をさしながらそう叫ぶと2人はポケットに手を突っ込みながら微笑んで、
花巻「俺らは及川たちに比べるとあなたとの付き合い短いけど───」
花巻「信じてんだよ、ちゃんと。」
松川「そーいうこと。」
………あぁ、ほんっと。
及川「そうこなくっちゃね!!」
良い仲間を持った。
花巻「まぁとりあえず1発ずつ及川の顔面にサーブぶつけとく?」
及川「なんで!?」
前言撤回、コイツら酷い!!
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。