薄暗い病室。病院特有の、鼻を突く薬品の匂い。
そんなもの、全てどうでも良いぐらいに
絶望に近いものが、ぐるぐると胸の中で渦巻く。
国見「俺、あなたさんのことが好きです。……だから、あなたさんが嘘ついてることなんてすぐに分かりました。」
最後の最期まで、口にさせてくれなかった。
最後の最期まで、あなたさんは優しすぎた。
優しすぎるが故に、自分に不器用だった。
国見「……知ってますか?あなたさん、昼休みとか部活が終わってみんなが帰った後とか。時間がある時はいつも1人でボールを磨いてたんですよ。」
及川「……ぇ。」
驚いた表情。自分への憎悪。表情ひとつでは言い表せないほどに、ぐちゃぐちゃな顔をする。
国見「あなたさんは、最期まで本気だった。最期まで、俺達のことを考えてた。…っ、自分の方が、苦しいくせにっ…。馬鹿みたいに…、本当にっ……優しすぎなんですよ、あの人は…ッ。」
言葉が詰まって、まとまらなくて。喉が痛くて胸が苦しくて張り裂けそうで。
どうしようもないほどの悲痛が、いっきに溢れ出す。
国見「好き、だったんです…ッ。好きなんです。……だから、孤独を味わってほしくなかった。素直でいてほしかった。……それなのに、最期まで独りで苦しんでた。……あなたさん、最期に言ったんです。“本当は、信じてほしかった”……って。“最期まで笑っていたかった”、“隣にいたかった”……っ、“嫌われたくなんて、なかった”……。そう、言ってました。」
きっとあなたさんは、こんなこと言ってほしくなかっただろう。
優しいから、傷つけたくないから。
……それでも、限界だったから、俺に話した。
言葉は何ひとつとしてまとまっていない。
こんなこと、あなたさんは望んでいない。
……それでも、言葉は止まらない。
国見「あなたさんが望んでたのは、俺じゃない。隣にいてほしかったのは、俺じゃない。……それでも俺は、あなたさんの中で特別でありたかった。例えあなたさんが、及川さんのことしか見ていなかったとしても…っ。俺だけは…味方でありたかった。」
及川「…ッ。」
不器用で、不格好な愛。
あなたさんは優しくすぎて、不器用すぎる。
国見「……及川さん。及川さんだって、あなたさんのこと“特別”だって思っていたなら……。どうして…っ、どうして、信じてあげなかったんですか…っ。どうしてッ、“気付かないふり”を、続けてたんですか…っ。」
及川「…それ、は。」
国見「自分を守るため、ですよね…?」
俺がそう聞けば、酷く顔を歪める及川さん。
及川「…あぁ、そうだよ。国見ちゃんの言う通り。……俺は、情けないんだよ。思っちゃってたんだ。心のどこかで、“あなたなら大丈夫だ”って。…そう、信じちゃってた。」
もう全て諦めたかのように、
涙なんて枯れ果てたのか、はたまた自分になく権利なんてないと思っているのか
彼の目は、乾ききっていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。