国見 𝒮𝒾𝒹𝑒
最近、及川さん達があなたさんのことを聞いてくるようになった。
覚悟を決めたんだって。知ろうとしてるんだって。
それは、嫌でも伝わってきた。
だけど、もう。
………遅いんですよ、何もかも。
あなた「国見、何かあった?」
国見「え?」
あなたさんの病室で考え事をしていると、そう聞いてきたあなたさん。
国見「………ぁ。」
どこまでも優しい笑顔で。全てを包み込んでくれそうな、暖かくて安心出来る笑顔。
思わず言ってしまいそうになったものを、グッと飲み込んだ。
“なんでもないです”と言えば、少し寂しそうに笑った。
国見「・・・。」
正直、何が正しくて、何をすべきか。
その答えが一向に出てこない。
……あなたさんはきっと欲している。
及川さん達のことを。
だけど、今更“及川さん達はあなたさんのことを信じてる”なんて伝えても。
ただあなたさんを苦しめるだけ。
ようやく出来た覚悟を、あなたさんの想いを無駄になんて出来ない。
けど、心の奥底に眠るあなたさんの本心は。
……俺なんかじゃなくて、及川さんに隣にいてほしいって思ってる。
……分かってる。分かってるさ。
俺に勝ち目がないことなんて。
それでも、隣にいたいから。
国見「あなたさん。」
自分でも、自分が狡いって思う。
国見「俺“だけ”は、ずっとあなたさんの味方です。」
あなた「……うん、ありがと。」
あなたさんにとって、この言葉が辛いものだって分かってる。
それでこの言葉を吐くのは、あまりにもずるいって。
そんぐらい、分かる。
だけど。
少しでも良いから。
あなた「国見は優しいね 笑」
あなたさんの中で、特別な存在として生きたい。
……ごめんなさい、あなたさん。
どこまでもずるい俺を、許してください。
国見「大好きです、あなたさん。」
あなた「……うん、“知ってるよ”。」
国見「・・・。」
……やっぱり、あなたさんは優しすぎる。
知ってるって言うの、苦しいくせに。
俺を苦しめないように、肯定して。
その優しさを、自分に向けられないあなたさんは
同時に、どうしようもないほどに不器用。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。