私は、平野紫耀のマネージャーになった
秘密を守るため!
あくまでも!
だけど、人間の心はわからないもの……
だけど、あたしは堕ちない!
今日は、ステージがあるから用意しなくちゃいけない
だけど……
人の世話なんか焼きたことないから分かんないよ
しまった!!
キャラ変えなくちゃ!!
え、なに。
馬鹿……?
今すっごいあたし慌てたんだけど
え……
バレてない
取り敢えず
よかったーー!!!!
そうして、ステージへ彼は上がった
男になんて興味無い。
なのに歌ってる彼が何ににも例えることが出来ないほど綺麗だ
誰かのこんな姿見たこと無かった
男なんていつも一緒
自分が一番で、飽きたらすぐ違う女を選ぶ
何故かあたしはそんな恋しかしたことがなかった……
人を知らなさすぎるせい?
何故……?
家も、お金も、美も
全て持ってるはずのに
なぜ……。
そんな恋ばかりしてんだろう?
ふと疑問に思った
そうして、ステージは終わった
次から次へと仕事が来る
こんなこともちろんしたことが無い!!
頭に血が上る!!
こんなことを思って真面目に取り組めてなかったからかお皿を割ってしまった
仕事場の貸しの、家具だったのに……
どうしよう……
この人は素直な人なのかしら。
すごく、優しい
なのに、この優しい人柄まで疑う自分が惨めだわ……
あたしは、お金持ちの令嬢であなたとぶつかったことを思い出していないのか
それとも、ただ忘れているのか……
わからない。
だけど、覚えていないなら好都合
素直な方でよかった……
方言……
口癖よ
まぁ、いいわ。
バレてないのだから
彼は、あたしの美貌に惚れたのかしら……?
よくある話よ
ほらね。
なっ?!?!?!
失礼な!!
誰に向かってそんなっ!!
あっ、しまった!!
隠してるんだった。
何怒っちゃってんの……
さすがにバレちゃう……!
え?
その美貌で?
当たり前でしょ?
何人の男の付き合ってきたと思ってんの
まぁ、みんなあたしを飾りとしてしか見てないからいい思い出はないのだけど……
男がよく使うセリフね
自慢の彼女。って
その言葉そのものが、飾りとしてしか見てない証拠なのよ
本音。
その本音がどれほど濁っているのか分からずに口にするのね
なら、あたしが女というものを教えてあげるわ
あたしもついて行った
こんなところ始めてくる
あたしにとったら全てが初めてだ
こんな世界も悪くない
一般の男に飽きたのか……
全てがかがやいてみえる……
芸能界の裏って感じね
ただこうやって合わせるだけ
え?
すごくいい人
あたしの周りにこんな方いたかしら……
こんな方と早く出会っていれば、あたしは失恋なんて経験しなかったんだろうか
あたしは、お礼を言いに次の撮影へ向かった彼を追いかけた
ようやく着いた……
あたしは、誰かとタメで話したことないのよ……
なんで彼はこんなにも気づかないんだろう?
自分とぶつかったのが、令嬢なんてものはどこにだってある話じゃない
気づかなかったのかしら……?
それもそれで、悲しいものね
そう考えながらやっているとまた失敗を繰り返す
やってしまった……
慣れてないからかしら……?
落ち着かない
ドン!!とまた誰かにぶつかってしまった
その人は、皇室カメラマンをやっている方だった
バレたらまずい……
バタバタしているのをいいことに都合よく隠れるあたし
なんでバレたの?!
知らないの?
誤魔化した
その翌日
全てが新聞などに書かれていた
こんなにもすぐにバレてしまうなんて
お父様になんていえば……
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あー、気づかれたかも知らない
どうやって、仕事場へ行こうか……
平野くん止めがあってしまった
なんでいんの?!
え、何も聞いてないの?
どうしよ……
隠すため。だったんだけど……
さすがに言えないな
世間の声ってどんなんなんだろう。
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プルプル……
電話がなった
花からだ
そう、バレたんだ
なのに何故、やめたくないって思うんだろ?
仕事が楽しくて?
おかしな感情だ
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人間の感情なんて、分からない
だから怖いんだ
ひとからどう思われてるか。なんてさほど重要じゃない
だけど……
あたしが恐れるべきなのは、ネットの声だった
『がんばれ!!』と言ってくれる人もいれば
『何してんの?馬鹿なんじゃ?』っていう悪質なコメント
これがあたしの知らなかった世界?
キラキラした世界の裏側には常に現実が伴う
誰かから、イメージをつけられレッテルの中で生きていく。
そんな世界?
あたしは、何も知らなかった
この時あたしは、自分がちっぽけに見えた
誰かの冷たい声がする
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あたしの知らない世界はこんなにも、真っ黒で
こんなにも残酷……
何よりもすごいのは、あたし自身ではなく
“この中を、生きる人"だった
この現実そのものがあたしに教えてくれた
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その声は切なく苦しいもの
その途端
ガチャん!!!
大きな音がした
目の前には、びしょびしょになっている平野くんがいた
水……?
さっきの人達の仕業かな?
でも、あたしをかばって濡れてくれた平野くんには本当にありがたくて仕方がない……
怒ってくれる人なんて初めて……
あたしが綺麗で、金持ちだから男も誰もがみんな気を使った
飾りとしてしか見てなかった
あたしは誰の心の中でも、たった一人の女として写ってなかった……
こんなあたしに向き合ってくれる誰かなんて居なかったんだ
だからつまらない"当たり前“が、あたしのふつーとなった
あなたのような人にもっと早く出会えてたらあたしは、変わってたのかな
早くしなきゃ……!
この人の前では、人でありたい。
令嬢ではなく一人の人間として認めて欲しい
あ、なんてことやってしまったんだろ
最近失敗ばかりだ……
何もしたことないから?
そんな甘えた理由で、終わらせたくない
そして、平野くんは着替え撮影へ向かった
撮影場所では、平野くんの周りには人盛りが出来ていた
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この会話をあたしは、近くで聞いていた
本当に愛される。ってこういう事なのね
キラキラした幸せの中しか知らないあたしは
ここに来て、沢山のことを学んでいる
まだまだ、知るべき世界がある。
その中であたしがどれだけの事が出来るのか……
何も知らない。そんなのもう、通じないなら
とことん見に行くわ
あたしは、ここを出ないことにした
だけど、その判断が人によって狂気になることを知らずに
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。