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第1話

プロローグ せめて最新巻くらい読ませて欲
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2021/08/10 13:57
side あなた




この世界に生まれて8年目。
階段から落ちて、前世の記憶を取り戻しました。
























オッス。オラあなた。
ごく普通のOLで、彼氏もいない独身生活を送っていた。
だが、別にそんなことは気にならない。
何故なら、私には、「推し様」がいるからだ!!!
高校生の時から大分重症なアニヲタである私はとあるアニメにどハマりしていた。
その名も、「僕のヒーローアカデミア」。
主人公の緑谷出久くんが大きなハンディを背負いながらも一生懸命努力し自分の夢を叶えようとする物語だ。
言うまでもなく主人公の緑谷出久くんはとてもいい子で何に向かっても一生懸命だ。
自分がどんなに苦しんでも人を助けようとする、そんな姿に自然と応援したくなってしまう。
その他にも個性的で魅力的なキャラクターが沢山いて、ストーリーも素晴らしく、ベタ惚れしてしまったのである。
そんな「僕のヒーローアカデミア」の最新巻を買いに行っていたその時。
気分は浮ついており、周りがあまり見えていなかったのだ。
耳を劈く様なクラクションの音が鳴り響き、え、と間抜けな声を零し、前を向いた。
その刹那。
ドン。
と鈍い音がなってどさり、と地面に崩れ落ちる。
人の叫び声がどこか遠くで聞こえた。

頭の中でぼんやりと浮かんだのは、自分の死への実感。
痛みなどもはや感じず、白昼夢を見ているかのよう。
視界が霞んで意識が遠のいていく。
嗚呼、最新巻、読みたかったのに。
せめて完結する時までは生かしてくれてもいいじゃん、という文句が浮かんだのを最後に、あなたの一人称は意識から手を離した。

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