side あなた
そして月日は風のように過ぎ去り、私が記憶を取り戻してから早約7年。
遂に、この日がやってきました。
肌寒い冬。
前世の時もこの時期は同じだったな。
みたい漫画、アニメを我慢して必死に頑張ったわ…懐かし。
履きなれたスニーカーを履いて玄関のドアを開ける。
にこり、と笑って母に手を振り、玄関から1歩、踏み出した。
リビングの奥でこちらを見詰めている兄さんと姉さんに気付かないふりをして。
はぇぇぇー…
ここが、雄英。
いや、まぁ下見とか体育祭とかで来てるんだけどね?
やっぱ、なんて言うか、雰囲気違うじゃん?
はぁぁ…緊張する…
校門の前で立ち竦むあなたの一人称を他所に次々に入っていく学生たち。
視界の端で揺れた緑がかった黒髪には気付かなかった。
すぅ、はぁ、と深呼吸をして、人生最大のイベントの舞台に足を踏み入れた。
ここ、雄英高校ヒーロー科の、入学試験という人生最大のイベントの舞台に。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!