アルバムには私と私のとなりに天彦君が笑っていた。そして次のページには私が泣いていて天彦君はいなかった。
その瞬間私はすべてを思い出した。
私と天彦君が付き合っていた事、天彦君と公園で遊んだこと、私の家に来るときに交通事故にあった事。
アルバムを私の涙が濡らす。
袖で拭っても涙が溢れてしまう。
嗚咽が呼吸と一緒にでて苦しくなる。
天彦君...ッ
ひたすら辛い気持ちが出くる。
声が聞こえた...
この声は...
私は顔を上げた。
私の目の前には天彦君がいた。
少しからだが透けている。
天彦君は私の頬についていた涙を指で拭って耳元で囁いた。
そして天彦君はわたしの唇に自分の唇を重ねた。
そう言うと天彦君は空へ溶けていった...。
私は天彦君が消えていった空を見上げて呟いた。
その言葉への理由はなかったが私は確信していた。
「また絶対に私たちは巡り会える」と...
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!