第3話

三章 侍女
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2024/12/05 05:50 更新
(壮絶な過去を聞いてしまった…いいのかしら、まあ本人が言ってたしいいかしら…)
アリシアは朝食の前の時間から、いま昼2時までずっとイヴの過去のことを考えていた。本を読み返していたけれどまったく頭に入っていなかった。
彼の過去の姿を想像するところから、ついにエメリー一家を追い払った男爵のことまで考えていた。
(イヴは昔は可愛かったのかしら…あ、あと、確かに男爵が出てけと言ったのはわかるけれど結局捕まったんだし家族まで取り締まらなくていいんじゃないかしら)
「様…!」
(あ、でも私が領主だったら追い払うかもしれないわ、私結構怒るもの)
「アリシア様!!聞いてらっしゃいますか!」
「はっ…はい!誰!?」
「リズです、わたくしを忘れるなんて…」
「違うわ、違うのよ。ビックリしただけ」
「冗談です」
「えっと…?何の用かしら?」
「アロマなんとかを配達員がアリシア様宛に持ってきたのです」
「アロマなんとか…?もしかしてアロマオイルかしら?」
「それです、それ!」
「あなた、もしかして怒ってる…?」
「怒ってないです、拗ねてるだけです。…これ、渡しますね」
アリシアはアロマオイルの入った箱を受け取った。
「それで、なぜ気が付かなかったんです?……もしかして、好きな人のことばっかり考えてたんですか?」
「は…はぁ!?何言ってるのよ、そんなわけなな……」
「否定できないじゃないですか…やっぱり好きなんですね!やっぱり恋の雰囲気があると思っていました!」
「ニコニコしないでちょうだいよ…今私はこの気持ちをどうしたらいいか考えてるのよ!」
「うふふ、恋してますね」
「もう…」
「アリシア様、もしよろしければこのあとまた私にお話を聞かせ—」
『リズさまー!どこにいらっしゃいますか!』
廊下から女の子の声が聞こえてくる。
「呼ばれてるわ…」  
「そうみたいですね…」
「それじゃあ…また明日にするのはどう?それなら、明日お昼まで私とお話をする仕事をあげるわ。そうしたら他のものの邪魔は入らないでしょう?」
「いいんですか…!?」
「もちろん、私だってリズとお話したいわ」
「ありがとうございます、それじゃあ、行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
リズは部屋を後にした。
           ❅
「はいはい、どうしたの?」
リズは扉を閉めてから言った。
どうやら声の主はリミントン家のハウスメイド、ニーナだった。困った顔をしている。
「取れないんです、ここの汚れが」
ニーナは窓にこびりついた汚れを指さした。
「ああ、窓の汚れね、それなら余った新聞紙で拭けばすぐよ」
「そうなんですね!?」
「インクが汚れを落としやすくするのよ。ほら、水につけて拭いてみなさい」
リズは新聞紙をポケットから取り出して、女の子に渡した。
「あ…!わざわざごめんなさい、ありがとうございます…!」
「いいえ、これくらいいいのよ」
「あの…!アネット様には秘密にしてくださいませんか…」
「なぁに、言わないわよ。私はそんなちょっとしたことでわざわざ報告しないわ、足が疲れるからね。」
「よかった…!」
アネットはリミントン家のハウスキーパーだ。ハウスキーパーは女性使用人の階級では頂点であり、使用人を監督する役割がある。それから、使用人の雇用と解雇、鍵の管理まで行っている。ニナは初めて働いたときにかなり厳しく忘れ物について注意されてしまったから、怯えているのだ。
(新聞紙を今から取りに行ったら、注意されると思ったけど、助かった…)
ニナは安心した顔になった。
「それじゃあ、もう行くね?」
「…はい!ありがとうございました!」
リズは別れを告げて、階段を降りた。
           

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