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第1話

Première
1,301
2019/03/29 07:39
店主
店主
……おや、可愛い子だね。迷子?それとも御客人かい?
店主
店主
御客人か。残念だけど、うちはイチゲンさんお断りってやつだから。さ、帰った帰った
店主
店主
……紹介状を持ってる、だって?本物?誰から受け取った?……まあどうでもいいさ、見せてみなよ
店主
店主
……ありゃ、本物だ
店主
店主
これは失礼致しました。改めまして、自動人形オート・プーペ専門店『Poupée de nuit』へようこそ
店主
店主
……堅苦しい、ですか?……あはは、本当に変わってるね、君
店主
店主
で、どうしてこんな店に来たの?さては訳ありだね?
店主
店主
……あ、黙っちゃった。図星かなぁ
店主
店主
いや、うち、君みたいな若い女の子、殆ど来ないからさ。物珍しくて。あ、飴ちゃん要るかい?
店主
店主
……分かった分かった、そんな顔しないでよ。悪かったって
店主
店主
でさ、君、何の用で来たの?
店主
店主
……
店主
店主
……
店主
店主
……店員?
店主
店主
…………
店主
店主
…………ああ、そうだった!
店主
店主
いやごめんね、すっかり忘れてたよ。そういえば求人広告出してたっけ。えーと、何年前だったかな--
店主
店主
……え?一昨日見ただって?広告を?…………あはは、冗談、冗談。人形屋ジョーク
店主
店主
そっか、店員かぁ……ああ、君いくつ?
店主
店主
……十八!随分若いね。僕にとっちゃ赤ちゃんみたいな物だ
店主
店主
……ところでさ、君、明日から働ける?
店主
店主
大丈夫、難しい事なんてないよ。僕の手伝いをしてくれれば良いんだから。客だって月にひとりかふたりしか来ないし
店主
店主
客が来たら、愛想良く挨拶をして、そこのベルを慣らして僕を呼んで、紅茶を淹れる。ちょっと簡単すぎやしないかい?
店主
店主
待遇面も心配はないよ。住み込み可、三食賄い付き、制服支給、日給はそうだなあ……このくらいでどう?
店主
店主
あはは、目ぇ真ん丸。こぼれ落ちちゃうよ
店主
店主
後は、そうだなぁ……君、人形は怖くない?
店主
店主
なんせうちは人形屋だからね。分かるかい、あそこの扉
店主
店主
あの扉の奥は自動人形でいっぱいだよ。まあ壊れ物だから、当分入らせてあげないけどね
店主
店主
……
店主
店主
……自動人形オート・プーペだよ。判る?
店主
店主
……もしかして、見たことない?
店主
店主
ええーっ、かわいそうな子。あんなに綺麗なのに
店主
店主
絹の髪、白磁の肌、宝石の瞳に細い肢体。色も艶も十人十色、もちろんぜーんぶオートクチュール。
三百六十度、全方位何処から見ても完璧な人形だよ
店主
店主
しかも、ね、動くんだ
店主
店主
電気も流してない、操師もいない。排泄も呼吸も、食事らしい食事もしない。それなのにまるで人間みたいに動くんだ。話すのも居る。不思議でしょう?
店主
店主
……あ、目ぇきらきらしてる。見てみたいって目だ
店主
店主
いいよ、うちで働いてくれたら、いつか飽きるほど見せてあげよう
店主
店主
どう?いい職場じゃないかな?
店主
店主
……ねえ、うちで働いてみない?

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