そこに居たのは
「…蛍」
今1番会いたくて同じくらい会いたくなかった人
「…黒尾さん…?」
「…じゃ、俺たちはこの辺で…行きますよ木兎さん」
「おう!」
「…月島。ちゃんと話し合いなよ」
「…どこから、聞いてたんですか」
「全部聞いてた。…蛍」
「…やめてください」
「蛍」
「やめてって言ってるでしょ!僕達もう終わりなんです!」
「別れたいって言われてない」
「っじゃあ今言います!別れてください!」
「なんで?」
「僕もうしんどいんです!苦しいんです!だから…だからもうやめたいんです!」
「…俺の事嫌い?」
「何言ってるんですか!黒尾さんなんて…黒尾さん…なんて…っ」
言えない。嘘でも”嫌い”なんて
「…ほーら言えない」
黒尾さんはゆっくり、1歩ずつ僕に近ずいてきた
思わず後ずさりしてしまった
「…逃げないで、蛍」
気づくと僕は黒尾さんの腕の中にいた
「…なぁ、蛍。ちゃんと話そう?蛍の話ちゃんと聞くし、蛍が別れたいって言うならちゃんと2人で決めて、スッキリ別れよう。だから、いなくなるのだけはやめてくれ…」
やっぱり…
「…だ」
「え?」
「…やだ」
「僕は…黒尾さんと一緒にいたい」
黒尾さんは僕の返事を聞いた途端、僕を強く抱きしめた
「蛍…っ!」
僕はそっと黒尾さんの背中に腕を回し抱き返した
「ごめ、ごめんな、さい、ごめんなさい、黒尾さん、ごめんな、さい、ごめんなさい…」
「謝んないでいーよ。その代わりって言っちゃなんだけど、今度からは黙って家出するのとかやめてくれる?すげぇ心臓に悪いから」
僕は全力で頷いた
「じゃ、帰ろっか。俺たちの家に」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。