前の話
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僕は一瞬にして目を奪われた。
ーそう、あの人が食べられたらどんなに美味しいか。
こんな話を聞いたことがある。
そう呟いた瞬間、僕はあの人の家族を殺していた。
あの人は突然の事に頭が追いついていないのか、呆然と立ち尽くしている。
そう……そんな顔も好きだ。絶望に満ちたその顔が。
嗚呼、泣いている顔もいい。愛おしい。
泣きじゃくる顔も好きだよ。
僕は君の色んな顔が見たいな。
喜びに満ち溢れている顔、悲しみに浸っている顔、怒りに満ちている顔……
そう言ってあげると僕の愛おしい弟は気を失った。