そのまま手を引かれて着いたのは、
何だ?このお店
このジャージ買ったのもかなり前だし、どこで買ったのかも忘れたし
大きく取り付けられた自動ドアから颯爽と中に入っていくジェルくん
かなり慣れてるな
「え、あのオレンジの人イケメン…………!」
「後ろの黒髪の人もかっこいい……………!」
オレンジと黒…………?
軽く周りを見てもその条件に該当する人は居ない
じゃあ僕達か
いやジェルくんはともかく、僕は可笑しいって
今すぐ兄ちゃんの脳力借りて全員眼科にワープさせたいんだけど……………
そんな事を考えていたら、ジェルくんは布と布の間に体を滑り込ませてどんどん店の奥に入っていく
その手には既に何枚か服が握られている
流石に商品棚の上をいつもみたいに飛び越えていく訳にもいかないから、仕方なく窮屈そうに敷き詰められた布の間をすり抜けていく
ようやく店の奥の突き当たりに立っているジェルくんを発見
急に後ろを向いてこちらに向かってきたジェルくんにぶつかりそうになり、咄嗟に横に跳ぶ
近くにあった試着室のカーテンをめくって入った
改めてジェルくんから渡された服を見てみる
でも折角選んでくれたのに突き返すのも悪かったので、渋々着ることにした
僕はカーテンの外に出た
目を真ん丸にしたまま固まってるジェルくん
前からその思考停止状態やめてって言ってるよね?!
あ、この細いジーパンみたいなやつスキニーって言うんだ
スキニーの他には、上には白いトレーナーで、その上からスカジャン(これもジェルくんに教えて貰った)を着ている
下は細い分、上はダボッとしたものを着て、細さを強調したり、上と下で白と黒のコントラストを入れたりと、色々工夫が為されている
……………ちゃんと僕の事も考えてくれてる
前から思ってたけど、ジェルくんって意外と優しいんだな
そこからジェルくんにエンジンがかかり、他にも色々なコーデを試してくれた
…………流石にスカート渡された時は拒否したけど
何回か試着した中で、特に気に入った2〜3コーデを買うことにした
え待って高っっっっ!!!!!!
ジェルくんごめん!!!
え………これで安いの………………??
やっぱり服の世界はわからん
そうなんだ
なんかしまむ〇って面白そう
↑だんだん丸の位置がズレてきてるって?
気のせい気のせい
またさっきと同じように手を握ってくれるジェルくん
もう二回目のはずなのに
顔の暑さにも、頭に血が上る感覚にも、
全く慣れない
これって本当に何なんだろう……………
③へ続く
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!