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第27話

黒色ちゃんの意外な特技③
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2021/08/03 04:41
洋服を買った帰りに、カフェに寄ろうと言うジェルくんについて行く



いや、正確には引っ張られている
(なまえ)
あなた
あの、さ、…………ジェルくん……………
ジェル
ジェル
ん?
(なまえ)
あなた
そろそろ、………離してくれない………?
ジェル
ジェル
え………何を…?
うん




もう僕イラついた





うん
(なまえ)
あなた
だーかーら!
(なまえ)
あなた
手!
(なまえ)
あなた
いつまで握ってるの!
ようやく自分の奇行に気付いたらしく、パッと手を離した
ジェル
ジェル
ほんまごめん……………
握っとったの忘れてたわ
(なまえ)
あなた
何で忘れんだよ……………
ちゃんと手に神経入ってんのかな
ジェル
ジェル
まぁええか
着いたし
そこは、普段行く個人経営のカフェとは違う、大手の会社のカフェだった


学校帰りに勉強しに来ている人や、純粋にコーヒーを楽しみに来た人まで様々だ



その分五月蝿いが
ジェル
ジェル
適当なとこ座って~
(なまえ)
あなた
うん
いつもの癖で、カフェの一番端にあるあまり目立たない4人がけの席に座る


ジェルくんなその反対側にゆっくりと腰を下ろした
(なまえ)
あなた
ここってどんな感じで注文するの?
ジェル
ジェル
メニュー見て決まったら、そこにあるボタン押して、そうしたら店員さんが来てくれるんやで
結構レストランに似た感じやな

そう言って笑って見せたジェルくんはこの店の空気に綺麗に溶け込んで、辺りにふわっと花が咲いているように見えた
ジェル
ジェル
んで、何飲む?
(なまえ)
あなた
いつも通りでいいかな
特にメニューを開かずに言った

こうゆう大きい感じのところだと、コーヒーを淹れるのはマスターではなく機械だろう

機械相手にそこまで悩む必要性を感じなかった
ジェル
ジェル
ブラックかぁ……
ジェル
ジェル
なぁなぁ、たまにはちょっと違うのも飲もうや
(なまえ)
あなた
え、でも………
ジェル
ジェル
ホラ!
いっつも同じもの見たり感じたりするよりは、違うもん試して見た方が、
なんというか、こう…………新しい
世界……………は言い過ぎか………まぁ、新しいもんが見れると思うで!
ジェルくんの稚拙ながらの説明は、意外にも僕の心にヒットした



たまには違うものを試してみる……………か…………
(なまえ)
あなた
……………うん、じゃあ、違うの
飲んでみる
ジェルくんのおすすめ教えてよ
ジェル
ジェル
お!!
やったー!!!!
些細な事で喜び、悲しみ、笑うことの出来るジェルくんとの生活は、僕の今までの風が吹いたら飛んでしまうような17年間よりずっと衝撃的で、刺激的で、退屈させないものだ
ジェル
ジェル
んで、俺のおすすめはこのミルクティーなんやけど、
(なまえ)
あなた
うん、じゃあ僕もそれを
机の横にあった小さなボタンを押す

カチリと乾いた音を立てたすぐ後、カウンターの方から玄関のチャイムのような音が聞こえた

これで少し経ったら店員さんが来るのだろう

何とも近未来的になったものだ


歴史の旅に出るには、僕はまだステータス不足のような気もするが



すぐに店員さんが来て、注文を伝えると、鉄仮面のようなスマイルを崩さずにカウンターの奥へと消えていった



逆にあのレベルは尊敬する
ジェル
ジェル
なぁ、甘いのって苦手だったりする?
(なまえ)
あなた
あーいや、普段そんなに食べないってだけで、苦手ではない
ジェル
ジェル
ほんま?!
ここな、角砂糖5個入れるのが1番美味しいんよ
う”っ………………
(なまえ)
あなた
それ、結構甘くならない?
ジェル
ジェル
いや、元々がそんなに甘くないミルクティーで、自由に調整出来るやつなんよ
(なまえ)
あなた
そうなんだ
胸焼けしそう…………………




お待たせしました、とミルクティーが運ばれてきた

辺りにふわっと優しい紅茶の香りが広がる
中々に美味しそうだ
ジェル
ジェル
んで、これを…………
ポチャン、と音を立てて甘い塊が茶色い水に落ちていく

それを付属のスプーンで混ぜる

さらに甘い香りが辺りに広がる
ジェル
ジェル
ん~、美味しいなぁ
本当に大丈夫かな

後で気持ち悪くならなきゃいいけど…………
(なまえ)
あなた
い、いただきます…………
優しく香るその液体に口をつけた
ジェル
ジェル
ど、どう……………?
(なまえ)
あなた
………………流石にこれをここに来る度に飲むのは甘ったるい
ジェル
ジェル
そうか……………
ジェルくんが分かりやすく項垂れる
(なまえ)
あなた
……………でも、あったまる
(なまえ)
あなた
嫌いじゃない
ジェル
ジェル
マジで?!?!
ダンッと大きく音を立てて身を乗り出したジェルくん

静かだった空間にいきなり音を発生させたため、辺りの人に一斉に睨まれる


「ごめんなさい」、と軽く謝りジェルくんは席に着いた
(なまえ)
あなた
本当に感情の起伏激しいね
ジェル
ジェル
そぉか?
そんなジェルくんと飲んだ最初のミルクティーは、優しくて甘い味がした














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