第7話

6話
359
2018/11/05 14:22
その日の部活。
ラストの試合形式で、私はゼッケンをつけて動き回っていた。


「あなた!」


飛んできたパスをミートして、その勢いのまま素早く相手を抜く。
そしてある程度ゴールに近付くと、味方にパスすると見せかけてジャンプシュートをした。
ボールが危なげなくゴールネットをくぐる。


「ナイシュ!」


守りに戻る最中、私にパスをした女バスのキャプテンが笑顔を向けてくる。私は無言で手を上げ、彼女とハイタッチを交わした。


「せんぱっ……!」


誰かの感動したような声が耳に届き、そちらに視線を移せば、口元を押さえてこちらを見てくる片桐くんと目が合った。
あまりにバッチリ合ったため驚いてしまい、すぐに目を逸らせなかった。

片桐くんも驚いたような顔をした。だが、彼は私のように固まることなく、みるみる嬉しそうに笑った。


“頑張ってください!”


女子を応援することはできないためだろう、口パクで片桐くんがそう伝えてきた。
ドキンッと心臓が飛び跳ねて、反射的に片桐くんから顔を背けた。

攻めてくる男子チームに気を配ることで、さっきの高鳴りを記憶からかき消そうとする。
する、けど――


「……っ」


――思い出すな。集中しろ!

拳を強く握って、油断している敵のパスをカットし速攻した。
自分で言いたくはないが私は足が速いので、ギリギリ追いつかれずにドリブル付きで走り抜き、レイアップシュートを決めた。


「かっ……こいい……!!」


今度はハッキリ分かった。片桐くんの声だ。
見られているんだと思うと何故か急に恥ずかしくなって、なかなかプレイに集中できなかった。

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